2016 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the pathological mechanisms of feline morbillivirus associated with chronic renal failure
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16K15039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮沢 孝幸 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80282705)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ネコモルビリウイルス / 慢性腎不全 / 自然免疫応答 / 欠陥干渉ウイルス粒子 / リバースジェネティックス / ネコ |
Outline of Annual Research Achievements |
ネコの死因の上位を占めている疾病として慢性腎不全がある。慢性腎不全の原因は単一ではないと考えられているが、2012年になってネコの慢性腎不全と関連するウイルスが香港で発見された。ネコモルビリウイルス(FeMV)と命名されたこのウイルスは、モルビリウイルス属に分類されている。FeMVは慢性腎不全の中でも、尿細管間質性腎炎と関連している。また、高齢ネコに多い慢性腎不全の多くは、尿細管間質性腎炎である。本研究の目的は、FeMVの病原性発現機構を明らかにし、ウイルスと腎炎の関係を明確にすることである。 近年、過剰なインターフェロン(IFN)の持続産生が腎障害を引き起こすことや、欠陥干渉ウイルス粒子がIFN経路を活性化することが報告されている。本研究では、FeMV感染細胞におけるIFN、IFN誘導遺伝子(ISGs)、サイトカインの発現状況を調べた。その結果、FeMV感染により、複数のIFN, ISGsおよびサイトカイン遺伝子の発現上昇が認められ、感染細胞中に「コピーバック型欠陥干渉FeMVゲノム」が検出された。センダイウイルスなどでは、コピーバック型欠陥干渉ゲノムが強力な自然免疫誘導因子となることはこれまでの研究で明らかになっていることから、腎炎発症機構に、欠陥干渉ウイルスによる宿主の持続的な自然免疫の活性化が関与している可能性が示唆された。 また、FeMVに対する液性免疫応答について解析した。FeMVは中和抗体存在下でも慢性感染し、尿に感染性のウイルスが検出された。また、血清疫学調査によって、FeMVに対する中和抗体と腎不全に相関があることが明らかとなった。 さらに、リバースジェネティクス技術を用いたFeMVのミニゲノム系の作出にも取り組んでいる。現在、組換えタンパク質の発現効率を上昇させるために、ミニゲノム系の改良を行っている。今後、組換えFeMVの人工合成系を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今期はFeMVに対する自然免疫ならびに液性免疫応答の解析を行った。その結果、FeMV感染によって誘導されるインターフェロン関連遺伝子と欠陥干渉ウイルス粒子が、FeMVによる腎炎発症機構と関与している可能性が明らかとなった。また、FeMVは中和抗体存在下においても完全に排斥されず、腎に慢性感染することを見出し、FeMVの慢性感染と病原性発現機構を説明する上で重要な知見を得ることができた。本研究で得られた知見は、獣医臨床上問題となっているネコの慢性腎不全の予防・治療法確立に貢献するものであり、今後さらなる研究の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、FeMV感染に応答する宿主の自然免疫因子の解析を推進する。昨年度に確立したin vitro持続感染系を利用して、FeMV感染初期と持続感染時において、ウイルスセンサー、IFN・サイトカインの発現がどのように異なるかを比較する。これにより、宿主体内において、FeMV持続感染時に発現が上昇する自然免疫因子を推定する。 さらに、FeMV感染初期および持続感染細胞からウイルスRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて持続感染前後の遺伝子変異を調べ、FeMVの持続感染に重要なアミノ酸変異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初申請では2年目は160万円を必要としていたが、配分予定額は90万円と44%も削減された。当初申請では1年目では340万円必要として申請していたが、配分額は200万円と42%も削減された。挑戦的萌芽研究の上限は500万円であるが、500万円で遂行できる研究計画を提出していたので、削減により一部実験をとりやめた。2年目の研究に必要な研究費は当初計画と同じ額が見込まれた。そこで、70万円を繰り越しし2年目の実験に備えることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画通り研究を遂行する予定である。
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Research Products
(4 results)