2016 Fiscal Year Research-status Report
微生物資源からの難病「進行性骨化性繊維異形成症 (FOP)」予防治療薬の探索研究
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16K15134
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
内田 龍児 北里大学, 薬学部, 講師 (60280632)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 進行性骨化性繊維異形成症 (FOP) / 天然資源 / BMPシグナル伝達 / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、① 進行性骨化性繊維異形成症 (FOP) 患者の病態を模倣した2種類の培養細胞評価系を導入することで、FOP が惹起する異常な骨形成タンパク質 (BMP) シグナル伝達経路を特異的に阻害する低分子化合物を微生物資源より探索し、②得られた候補化合物については、合成的手法を利用して誘導体へと導き、構造活性相関を明らかにすることで創薬シードへと展開する。さらに、③作用機序の解析を進めることによって、その標的タンパク質を利用した新しい評価系の構築へと繋げることを目的として進めている。 本年度は ① の微生物資源からのスクリーニングを中心に研究を展開した。真菌・放線菌の培養液約 1,000 サ ンプルを評価した結果、Streptomyces に属する一放線菌 BYK11038 株から新規化合物 3 成分 (スコップラノン A~Cと命名) の発見に成功した。その構造は 3-フラノン環を基本骨格とし、スコップ様の置換基を 2 つ含む非常にユニークな構造であることを、NMR を含む各種機器分析の解析から明らかにした。スコップラノン類の BMP シグナル伝達阻害活性は、マウス筋芽細胞より樹立された C2C12 細胞に変異 I 型アクチビン受容体を発現させた細胞を用いて評価系した結果、それぞれ 2.70、8.20 および 28.9 μM の IC50 値を示したことから骨分化を阻害する可能性が示された。しかし、弱い細胞毒性 (IC50 値:96.1、307 および 253 μM) も示すことから、誘導体合成でその差を改善できるかが今後の課題である。またスクリーニングでは、BYK11038 株以外にも単離精製のための候補菌株として幾つか選択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規低分子化合物スコップラノン類が取得できたことは大きな進展であり、全合成研究に取りかかれている。また、スクリーニンングにおいて、次の精製候補となる菌株も取得できている。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに新規化合物 (スコップラノン類) を取得できているが、より活性の強い化合物の取得を目指し、微生物資源からの低分子阻害剤のスクリーニングを継続して行う。また、本年度選択した残りの候補株についても活性物質の単離精製を進め、新規性を明らかにすると共に BMP シグナル伝達阻害活性についても明らかにする。 スコップラノン類については、連携研究者による全合成および誘導体合成を進め、細胞毒性との差を改善できる化合物の創製を行う。また、その特徴的な構造からその生合成経路にも興味が持たれ、今後、13C 標識酢酸等の取込実験を実施し生合成経路を推定する。さらに活性については、その BMP シグナル伝達阻害活性がI型受容体を介し標的遺伝子である Id1 を転写するまでの過程を直接阻害しているか否かを確認し、薬剤シードとしての可能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、培養液からの BMP シグナル伝達阻害物質の単離精製の過程において、既存のガラス器具、カラム、樹脂等で代用できたことから、その分の支出額が抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
単離精製の候補となる培養液がスクリーニングで幾つか選択されており、次年度はその培養、単離精製に用いるための培地、培養器具、ガラス器具、カラム、樹脂等の購入費として使用する。
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Research Products
(3 results)