2018 Fiscal Year Research-status Report
患者の受療行動と過剰受診・過剰投薬の実態およびその是正に関する探索的研究
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16K15299
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤江 敬子 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (80623959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多剤処方 / 不適切処方 / ポリファーマシー / 高齢者 / 薬物療法 / 薬剤有害事象 / 医療費 / 国民皆保険 |
Outline of Annual Research Achievements |
【調剤薬局来局者における多剤処方の実態と不適切処方の有無】 昨年度は茨城県内の調剤薬局12店舗において、2015年の連続した40日間(2月1日~3月12日)に取り扱った処方箋のうち、75歳以上の約8000件につき患者毎の薬剤数をカウントするとともに、日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法 ガイドライン2015」に基づき潜在的不適切処方(PIMs)の抽出を行った。本年度はデータの季節性を検討するために、別の40日間(6月1日~7月10日)について検討したが、処方薬剤数やPIMsの傾向に違いは認められず、季節による変動はないものと考えられた。PIMsの処方に関連のある患者因子を多変量解析したところ、ポリファーマシー(5剤以上の処方)であること、及び複数の医療機関または診療科を受診したことが有意に関連していたが、年齢や性別はPIMs処方に特に関連は認められなかった。患者ではなく処方箋単位で観察したところ、100床未満の小規模医療機関による処方、ならびに一般内科、脳神経外科、循環器科からの処方にPIMsが多いことがわかった。これらの診療科はPIMsの半数を占める睡眠薬の処方も多かった。 これらの結果と昨年度得られた知見より、総薬剤数が5剤以上、または慢性期内服薬数が4剤以上の処方を受けている高齢者が来局したら、薬剤師は注意深く処方を精査すべきであり、特に小規模医療機関の上記3診療科からの処方は注意を要すると考えられる。また、睡眠薬の処方は転倒や認知障害などのリスクも高く、特に慎重に処方すべきである。 以上の結果をもとに、データや解析結果の確認を行った後、学術雑誌への投稿のため論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・調査対象期間を変えての解析に予想以上の時間を要し、その他の解析にリソースを割くことができなかった。 ・大学院生が行った解析結果に誤りが多く、データの確認と修正に時間を要した。 ・調剤薬局のデータを用いた研究に注力する方針としたため、それ以外の研究に着手する余裕がなかった。 ・しかしながら、PIMsに関連する因子のうち患者に関するものを明らかにすることができ、さらに処方箋単位での解析にも着手することができた。 ・データをまとめて論文化する目途が立ち、執筆を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度中に、PIMsの処方に関連する患者因子に関する論文執筆を完了し、投稿して採択されることを目指す。 続いて、患者単位ではなく処方箋単位でのデータ解析を行い、PIMsを処方しやすい医療機関、医師等の要因を明らかにする。 可能であれば、解析対象期間を拡大し、2015年のガイドライン公開後にPIMs処方がどのように変化したかを調査する。
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Causes of Carryover |
今年度はデータの解析に注力したこと、研究代表者が非常勤研究員となり研究に十分な時間が確保できなかったことから、予定していた人件費、旅費、学会参加費などの支出が予定額を大幅に下回った。次年度は論文投稿のための英文校正費、論文投稿料を要する見込みであるため、それらの目的で残額の使用を予定している。
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