2016 Fiscal Year Research-status Report
心筋幹細胞ニッチを制御する細胞外基質を用いた新規デバイスによる心不全治療法の開発
Project/Area Number |
16K15631
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤 芳樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00243220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 茂夫 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (10396749)
齋藤 充弘 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (20448038)
寒川 延子 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (30432579)
福嶌 五月 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (80596867) [Withdrawn]
秦 広樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80638198)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幹細胞ニッチ / 細胞外マトリックス / 組織修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、内在性の自己幹細胞による心筋再生修復という観点から、規格化・製品化された細胞外基質を用いて人工的に幹細胞ニッチを構築し、内在性の幹細胞の機能を改善することにより心機能を回復させるという、今までにない新たな組織修復法の開発を行い、心不全に対する新たな治療法につなげることを目的とする。 平成28年度には、まず培養骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)を種々の細胞外基質(ECM)上で培養し、接着能と増殖能について検討を行った。心外膜部にはラミニンー221およびラミニン-511が発現していることが明らかにされていることから、特にその2つのECMに着目して検討を行った。その結果、MSCsはラミニン-511に対して強い接着活性および増殖活性を示したが、ラミニンー221に対する接着活性はほとんど認められず、また増殖活性もラミニン-511上での培養に比して、有意に低いものであった。 さらに、in vivoでの効果を検討するために、アテロコラーゲンシートにECMを含浸させ、急性心筋梗塞モデルラットの心臓に移植した。移植4週後に心臓組織を採取し、組織学的解析並びに遺伝子学的解析を行った。遺伝子学的解析では、LM511移植群において、PGF、FGF2、SDF-1等の血管新生に関わる遺伝子が他群より有意に発現していることが明らかとなった。組織学的解析では、ラミニン-511移植群では他群に比して、血管内皮細胞と思われる細胞が増加しており、それらの細胞の一部は骨髄細胞由来と考えられる所見が得られた。また、繊維化状態はラミニン-511移植群において改善傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、in vitroにおける培養骨髄由来間葉系幹細胞の細胞外基質上での活性については検討が進み、骨髄由来間葉系幹細胞に適した足場を同定した。また、心筋梗塞モデルラットを用いたin vivoでの細胞外基質移植の効果の検討は、一部解析が進みつつある。今後さらに詳細な解析を行い、その効果の作用機序を明らかにできるよう準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋梗塞モデル動物への細胞外基質移植後の心機能評価を超音波検査にて継時的に行うとともに、さらに詳細な組織学的解析を行う予定である。具体的には、血管内皮細胞、心筋細胞、CD抗原等の各種免疫染色をすることで、集積細胞のキャラクタライズを行い、さらに、それらの細胞の局所での作用について検討を行う。また、細胞外基質移植後の状態においても、移植直後、あるいは長期経過後を観察することで、細胞外基質移植による効果の作用機序を明らかにする。一方で、in vitroの検討で得られた結果は、in vivoで認められる状態の考察に重要なものだと考えるため、未実施のin vitroの検討も進める予定である。具体的には、細胞外基質上で幹細胞を培養あるいは分化誘導をかけ、未分化性の維持能と分化能の評価を行う。また、細胞外基質上で培養している細胞を、in vivoでの虚血環境を模倣している低酸素条件下に置き、細胞のサイトカイン産生を検討するとともに、抗アポトーシス効果についても検討を行う。
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