2016 Fiscal Year Research-status Report
顎顔面形成不全に関わる遺伝的要因と環境的要因の相互作用解明
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16K15836
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒坂 寛 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (20509369)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口唇口蓋裂 / 遺伝的要因 / 環境的要因 / アルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期における顎顔面の形成は複雑かつ精巧に行われ、その発生過程の不具合は口唇口蓋裂等の顎顔面形成不全の原因となる。同疾患は多因子性疾患であり、胎生期における遺伝的要因と環境的要因に大きな影響を受けて発病する事が知られている。それぞれの要因における疾患発症のメカニズムは古くから研究が続けられているが、実際のヒトの発生過程では遺伝的要因と環境的要因が同時に作用する場合が殆どであり、これら二つの要因の相互作用によって起こりうる生物学的事象を解明する事は顎顔面形成不全を始めとする先天性疾患の病因を知る上で非常に重要である。本研究では様々な遺伝的要因と環境的要因の相互作用が疾患発症に至る機序を解明し、顎顔面形成不全の予防や早期発見に貢献する知見を生み出す事を目的とする。本年度の研究では主に2つの方向から研究を推進した。以下にそれぞれの具体的な進捗状況を列挙する。1.大阪大学歯学部附属病院に来院した遺伝的要因が強く疑われる口唇口蓋裂患者のエキソーム解析と2.口唇口蓋裂の遺伝的要因として既に同定されているRdh10と環境要因であるアルコールの相互作用を評価した。1.に関しては現在のところ3家系のエキソーム解析が終了しておりそれぞれの家系において患者に共通の遺伝子変異を多数見出している。その中でもRho-Gap 遺伝子family のDlc1遺伝子については複数の家系に渡り変異が認められた事から現在ゲノム編集を用いてヒトと同じ変異を持つマウスを作製中である。2.については当科に既に存在するRdh10変異マウスにアルコールを投与する事によりこれらの因子の顔面発生における相互作用を解析している。現在までにアルコールを投与した郡では非投与郡に比較し軟口蓋裂が多く発症する事を明らかにしており、今後は同表現形のメカニズムを詳細に解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては家族性の口唇口蓋裂患者のエキソーム解析から原因となる遺伝的要因を同定する事や、マウスを用いて遺伝的要因と環境的要因の相互作用が解析可能な実験系を確立する事を目的としており、おおむね順調に実験計画は進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に家族性の口唇口蓋裂患者から同定したDlc1の変異を持つマウスを作製し、顎顔面形成不全の表現型が認められたものについては解剖学的、組織学的解析を行う。マウスの顎顔面の解剖学的な表現型を解析する為に様々なステージで胎児を取り出しWhole mount nuclear fluorescent imaging (Sandell LL, Kurosaka H et al, Genesis. 2012 Nov;50(11):844-50)を用いて観察を行う。また同マウスに様々な顎顔面形成不全の原因となる環境因子を作用させて表現型の変化を探索する。表現形が悪化したものに関しては、その遺伝子変異が特定の環境因子に対して特に危険性が高い事が強く示唆される。この様な場合には遺伝子変異単独で起こる表現形と環境要因が加えられた時の表現形の違いの詳細な解析を行う。
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Research Products
(7 results)