2016 Fiscal Year Research-status Report
超大規模脳型回路における発火周期保障型パルス結合位相振動子系の実現
Project/Area Number |
16K16130
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
松坂 建治 宇部工業高等専門学校, 制御情報工学科, 助教 (00755879)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 結合位相振動子系 / ニューラルネットワーク / 電子回路 / 集積回路 / 超大規模脳型回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,本研究の核である発火周期保障モデルの開発と,パルス結合位相振動子モデルへの導入および検証を行った.また,集積回路開発に必要な設計環境に関する予備検討と導入も並行して実施した. 研究代表者はこれまでに,パルス結合位相振動子系のモデルとして知られているWinfreeモデルを基に,スパイクパルス入力を導入したパルス結合位相振動子系モデルを提案し,このモデルを実現する電子回路を開発している.このモデルでは,結合した他の振動子から受けたスパイク入力タイミングと,振動子の位相に応じて時間軸に展開する位相応答関数の相関によって位相状態を更新することで,結合した振動子間の発火位相差を制御している.本研究ではこのメカニズムを利用して,同相同期状態(同一タイミングで周期的に発火)を起こさせた際に生じる更新の値から位相差分を取り出し,これを保持することで発火周期を保障する(ネットワーク内の全振動子の発火周期を同一に保つ)モデルを構築した. 発火周期保障モデルはその動作メカニズムが結合位相振動子の位相更新動作と原理が同一であるため,演算結果の反映先を変更することで構成することができる.このモデルを導入した発火周期保障型パルス結合位相振動子モデルにおいて,系の動作は発火周期保障(同相同期により周期差を保持)動作と結合振動子による同期現象を発生する従来通りの動作の2段階となる.これらの動作を検証するため,回路実装した際に生じる振動子間の周期ばらつきを想定した数値シミュレーションを実施し,モデルの検証を行った. また,これらのモデル構築および検証と並行し,これらのモデルを実現する電子回路設計および回路シミュレーションによる検証を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の目標は,本研究の核である発火周期保障モデルの開発と,パルス結合位相振動子モデルへの導入および検証と集積回路開発に必要な設計環境に関する予備検討と導入であった. これに対し,発火周期保障モデルの考案および開発と,開発モデルに対する数値計算シミュレーションプログラムを構築し検証を行った.また,数値計算シミュレーションにおいて,回路実装した際に生じる振動子間の周期ばらつきを想定した,振動子系による検証を行った.さらに,これらのモデル構築および検証と並行し,当初の予定を前倒ししてこれらのモデルを実現する電子回路設計および回路シミュレーションによる検証を開始している.集積回路の開発・設計環境の導入については設計ソフトウェアの決定および導入に遅れが生じているが,上記の回路設計及びシミュレーション評価の前倒しにより,本研究課題は当初の予定通りおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半は,平成28年度に開発した発火周期保障モデルを実現する電子回路の設計に取り組み,電子回路シミュレーションによる検証を実施する.電子回路は研究代表者がこれまでに提案したパルス結合位相振動子回路およびこれらを発展させた結合ネットワーク回路をベースとし,発火周期保障モデルを必要最小限の回路構成で実現することで,回路規模および消費電力の増大を抑える.平成29年度後半は電子回路の検証と並行して,市販のディスクリートのトランジスタを用いたアナログ電子回路の製作および発火周期保障型パルス結合位相振動子モデルの複数結合ネットワークを実現する集積回路のレイアウト設計・開発を行う.また,構築したモデルを大規模な結合ネットワークに拡張した大規模結合位相振動子系を構築し,数値シミュレーションによる系の振る舞いの検証および知的画像処理等へのアプリケーション応用について検討・評価を行っていく.平成29年度以降は,モデルおよび電子回路設計において一定の成果が得られ次第,学会発表や学術雑誌等によって随時公表する. 平成30年度前半は,平成29年度後半に設計した集積回路レイアウト(マスクデータ)を外部機関のLSI試作サービス(VDEC等)を通じてチップ試作依頼する.また,試作チップの測定を行うための準備と,電子回路製作・評価および大規模結合位相振動子系を用いたアプリケーション適用についての数値計算検証について引き続き並行して実施する. 最後に,平成30年度後半に試作チップの測定・評価を行い,開発したモデルおよび回路の有効性を検証する.また,集積回路開発環境の導入または回路検証の遅れ等によって当初の計画通りに進まず,平成29年度内に集積回路設計が完了しなかった場合でも,平成30年前半までに集積回路設計を完了しLSI試作を依頼することで本研究を最終段階まで進めることができる.
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Causes of Carryover |
購入を計画していた物品(計算機)が当初の予定よりも若干費用が安くなったため,購入費用に端数が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入予定であった物品の購入費に充てる.また,研究成果発表の旅費および参加費として使用する.
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