2018 Fiscal Year Research-status Report
超大規模脳型回路における発火周期保障型パルス結合位相振動子系の実現
Project/Area Number |
16K16130
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
松坂 建治 宇部工業高等専門学校, 制御情報工学科, 助教 (00755879)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 結合位相振動子系 / パルス結合位相振動子 / 大規模集積 / 集積回路 / 電子回路 / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,発火周期保障モデルを導入した結合位相振動子を用いた大規模結合位相振動子系を構築し,数値計算による系の振る舞いの検証を実施した.また,発火周期保障モデルを実現するCMOSアナログ電子回路を改良設計し,2素子結合系を想定した電子回路シミュレーションによる検証を実施した. 発火周期保障モデルにおいて,発火周期の状態更新メカニズムは結合位相振動子の位相状態更新メカニズムを利用している.これにより,電子回路設計において,発火周期保障機能と振動子状態更新機能の2つの回路ブロックを同一の機能ブロックとして組み込むことで回路素子数の低減および集積回路上での実装面積の縮小が可能となる。結合位相振動子回路において実装面積の大部分を占めているアナログ回路部分は,振動子の位相状態をリセットおよび発火信号を出力するための比較器・アナログバッファ・キャパシタが主な構成要素となる.発火周期保障機能は,結合位相振動子回路の比較器のしきい値に状態更新を加えることにより実現できるため,この比較器を改良することで大幅に回路実装面積を縮小できる.また,結合位相振動子回路の発火信号出力をデジタル順序回路により制御することで,アナログ回路部分を時間軸上で再利用することができる.平成30年度はこれら比較器の改良とそれに伴うアナログバッファの削除およびデジタル回路の追加により,回路の素子数および回路規模を大幅に低減するための改良設計および改良した回路の検証を実施した. さらに,これらの回路改良および回路検証結果を,数値計算による大規模ネットワーク検証に反映した周期保障動作の検証を行った.この数値検証の結果,回路に導入した拡張機能を用いた場合でもネットワーク全体の周期収束が可能であることを明らかにし,回路構築におけるさらなる大規模集積に向けた知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30 年度前半の当初の目標は, 平成 29 年度に設計した集積回路レイアウト(マスクデータ)を 外部機関のLSI試作サービス(VDEC等)を通じてチップ試作依頼する予定であった.また,試作チップの測定を行うための準備と,電子回路製作・評価および大規模結合位相振動子系を用いたアプリケーション適用についての数値計算検証について並行して実施することであった. この目標に対し,平成29年度の研究計画において生じた大規模シミュレーションに伴う問題による遅れを受けて研究計画の見直しを図った.本研究の内容は(1)発火周期保障モデルの開発・検証(2)開発モデルを実現する電子回路設計・検証(3)集積回路設計・評価の3要素で構成する予定であった.このうち,(1)開発モデルの検証において大規模結合系の数値シミュレーションに大幅に時間を要したために,(3)集積回路設計・評価の項目に到達することが困難と判断した.このため計画を変更し,(3)の項目を削除して新たに(1-2)開発モデルの大規模系検証を実施するよう計画の見直しを行った. 現在の進捗状況は,上記の見直しを加えた研究計画からはおおむね順調といえるが,本研究課題の当初の予定からはやや遅れているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き提案モデルを実現する電子回路の設計および回路シミュレーションによる動作検証を行う予定である.また,昨年度に引き続き大規模結合位相振動子系における数値シミュレーション検証も並行して実施する.電子回路では大規模集積に向けて,回路中の素子数低減と機能の再利用を中心に改良設計を進めていく.数値検証では,振動子ネットワークの大規模化と集積回路実装に向けたパラメータ最適化を行い,電子回路設計および検証によって得られた知見を加えて,大規模結合位相振動子系の振る舞いを検証していく予定である. モデル開発・数値シミュレーション検証および電子回路設計において一定の成果が得られ次第,学会発表や学術雑誌等によって随時公表する.
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Causes of Carryover |
(理由)研究計画の見直しを行った.この見直しに伴い,購入を計画していた物品が必要となる時期が変更となった. (使用計画)物品の購入費に充てる.また,研究成果発表の旅費および参加費として使用する.
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