2016 Fiscal Year Research-status Report
安定同位体比および微量元素組成によるアジアのコメのトレーサビリティシステムの構築
Project/Area Number |
16K16302
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 彌生子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品分析研究領域, 主任研究員 (00515059)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コメ / トレーサビリティ / 安定同位体比 / 微量元素組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア太平洋地域における食品トレーサビリティシステムの構築を目的としたFAO/IAEA技術協力プロジェクト(RAS5062)の協力を得て、アジア太平洋地域13か国(オーストラリア、バングラディッシュ、カンボジア、中国、インドネシア、日本、ミャンマー、マレーシア、パキスタン、フィリピン、タイ、ベトナム、スリランカ)より、198試料の素性の明確な米(玄米または精米)を収集した。米糠の炭素同位体比が低いことが報告されているため、玄米試料は精米機にて精米を行った。精米した試料はミルで粉末にした後、元素分析計を接続した同位体比質量分析計(EA/IRMS)を用いて炭素・窒素・硫黄および酸素同位体比を測定した。 バングラディッシュ、マレーシアおよびフィリピンの米試料は、日本・パキスタン・タイに比べて炭素同位体比が低かった。フィリピン試料の硫黄同位体比は他の国々よりも低い傾向が見られた。オーストラリアの米試料は、硫黄および酸素同位体比が他の国々よりも高い特徴が見られた。日本産の精米については、他の国々に比べて、炭素同位体比が高く、酸素同位体比が低い特徴が見られたが、一部の試料においては、中国・タイおよびフィリピンの試料と分布が重なる傾向も見られた。 以上より、精米の炭素・窒素・硫黄および酸素同位体比は、アジア各国の米試料の特徴を示すことが示唆された。一方で、各国で分布が重なる部分も見られることから、微量元素分析の結果と組み合わせて判別精度の向上を検証する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジア太平洋地域よりサンプル収集を行い、計画当初の10か国よりも多い13か国よりサンプル収集を行うことができた。安定同位体比については、水や気象条件などを反映することから炭素および酸素同位体比を中心に分析を行う計画であったが、窒素および硫黄同位体比の測定も行い、当初よりも多くの分析を実施することができた。一方で、微量元素分析については、計画当初は分析が完了している予定であったが、収集できた試料数が多いことから、試料の前処理と一部試料の分析までとなっており、遅れている。引き続き分析を進めるとともに、得られた数値の解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた安定同位体比の結果から、アジア各国の米試料の特徴を示すことが示唆されたが、各国で分布が重なる部分も見られるため、他の手法での解析や複数手法の組み合わせが必要と考えられる。早急に微量元素分析を終了させ、微量元素組成のみでの各国の特徴を解析するとともに、安定同位体比と微量元素組成の結果を組み合わせて判別精度の向上を検証する。
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Causes of Carryover |
微量元素分析については、計画当初は分析が完了している予定であったが、収集できた試料数が多いことから、試料の前処理と一部試料の分析までとなっており、遅れが生じており、測定用のガスなどの消耗品費として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に使用予定であった微量元素分析の測定用ガスなどの消耗品費として使用予定である。
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