学習者による例文抽出ルールの共同作成に関する研究

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K16318
• Research Institution: Hyogo University of Teacher Education
• Principal Investigator: 掛川 淳一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90403310)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 教育工学 / 外国語教育 / 分散協調教育システム / e-ラーニング / コンピュータ支援学習（CALL）

Outline of Annual Research Achievements

本研究においては，本来，領域専門家，および知識工学者が行ってきた例文抽出作業を学習者に行わせ，学習者に表現における文法的特徴を陽に扱わせることで，問題解決的な表現法学習のプロセスを生起させる環境の構築を目的とする．また，それらの作業を学習者が共同で行える環境とすることで，社会文化的な学習の生起が期待できる．このような学習の効果検証を行うべく，想定している評価実験においては，被験者に，自身の研究に関連する英文論文を読解する中で，自身の英文論文の際に参考となる表現に注目させ，当該表現とその文法的な特徴について検討を行うべく，同一の表現に付与された「埋め込み電子ノート」を検索させる作業を行わせる．
上記のような構想のもと，学習を社会的・文脈的に生起させるための，領域における表現に関する「先輩の電子ノート」（「埋め込み電子ノート」）に基づく表現学習のためのシステムを試作し，その評価実験を当該年度の主たる作業として予定していたが，これまでの作業の遅延を取り戻すべく，前年度は，研究を「埋め込み電子ノート」作成作業に焦点化した．作業は，英語教育を専門とし，英文修士論文を課しているコースに所属する大学院生2名（アカデミック英語のライティングの授業を受講済み．以下，作業者）をアルバイトとして雇用し，彼（女）らに自身の研究に関連する英文論文から抽出させた．結果として，「埋め込み電子ノート」の数は，前々年度，および前年度に提供を受けた表現と合わせ，2540個（前年度比：約1.4倍），表現種類数としては1063個（前年度比：約1.3倍）を収集することができた．

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

前年度は，これまでの遅れを取り戻すべく「埋め込み電子ノート」作成を継続して行ってきたが，その多くは，屈折等の語幹を同じくするような表現，また接続辞のものが多く，そのため実質としての表現種類数は多いとは言えない．学習者に，表現とその文法的な構造を帰納的に学習させるためには，同一表現について複数の「埋め込み電子ノート」が必要となるため，表現当たりの例文数が2以上（可能であれば3程度）必要と考えており，その点からは，例文数が十分とはいいがたい状況となってしまっている．また，前年度後期から本務のため多忙となってしまい，上記作業者による作業の監督，および評価実験のための被験者候補者との事前打合せのための日程調整が困難となってしまい，結果として，研究の進捗は遅れている．

Strategy for Future Research Activity

今年度前期には，評価実験準備のため，引き続き「埋め込み電子ノート」作成を行いつつ，データの整形作業を行っていき，後期には，アカデミック英語のライティングの授業を受講した大学院生を被験者として評価実験を予定している．評価実験については，被験者に課する作業内容を修正し，評価実験時において，例文検索用の表現の「構文的特徴」を被験者にさせる中で，その検証作業を行わせることを検討している．検証のための例文を被験者自身に作文させる作業を組み込むことで，評価実験の中で例文数が増加していくことが期待できる．

Causes of Carryover

本務の都合から難しくなり，当初予定していた関連国際会議，学会の全国大会への参加，およびそこでの情報収集について，予定していた旅費分が繰り越しとなり，また「埋め込み電子ノート」作成作業監督，および評価実験のための時間確保が難しくなってしまい，予定していた謝金分が繰り越しとなった．