2016 Fiscal Year Research-status Report
大日本帝国剣道形増補加註の制定過程に関する研究:近藤知善筆の討議記録に基づいて
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16K16501
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Research Institution | Kobe University of Welfare |
Principal Investigator |
矢野 裕介 神戸医療福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (60571966)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 剣道史 / 大日本帝国剣道形増補加註 / 討議内容 / 太刀の形 / 形説明 / 日本剣道形 / 剣道形成立過程 / 新史料 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在実施されている日本剣道形は、大日本帝国剣道形加註(1917年)を経た大日本帝国剣道形増補加註(1933年)を原本としている。従前の研究によれば、大日本帝国剣道形増補加註を制定するに至った経緯や実行の手順については明らかにされているものの、その過程でどのような討議がなされたのかについては、関連する史料が残っておらず、これまで80年余りにわたり不明とされてきた。本研究では研究代表者が発見した剣道形に関する新史料、すなわち大日本帝国剣道形増補加註の制定に向けた討議の様相が克明に記された近藤知善筆の討議記録の解読・分析を通して、大日本帝国剣道形増補加註の制定に関する事実経過について解明することを目的としている。なお討議記録の内容は、1917年の大日本帝国剣道形加註の構成項目、すなわち「立會」、「懸聲」、「劍」、太刀の形七本、形「説明」、「小太刀形三本」に対し、高野佐三郎(範士)等、当時の剣道大家21名が意見するものとなっている。 平成28年度は、それら項目の中でも、太刀の形「第二本」、「第三本」、「第四本」、「第五本」、「第六本」、「第七本」、形「説明」に焦点を定め、討議された内容(意見)の解読・分析を行った。対象とした範囲では合計91の修正意見が出されていたが、加えてそれら修正意見の内容と1933年の増補加註を比較した結果、23の修正意見がそれに反映されていることが解明された。また1933年の増補加註に反映されなかった修正意見の中でも、例えば「第七本」での折り敷いて(右膝を着いて)胴を打つという技術そのものに対して、「膝ヲ付ケルノハ後ノ業ニ應ズル体配デナイ所謂拔胴ハ中腰ノ方ガ実際稽古ノ上カラ云フテモ良イ」という渡辺栄(範士)のそれからは、当時の竹刀打ち剣道の実態(幕末期の折敷胴はほとんど行われなくなった)と形との摺り合わせが考えられていたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は、以下の通りであった。
(1)平成28年度は、研究代表者が発見した剣道形に関する新史料(討議記録)の解読を行い、討議内容の全内容を把握する(文字に起こす)。 (2)平成29年度は、討議の対象となった大日本帝国剣道形加註の項目ごとに分析を加え、関係各氏21名のうちの誰が、どの箇所に、どのような意見(修正文言と修正理由)を述べているのかを明らかにする。なお修正理由には、発言者の剣道形に対する考え方や技術論、方法論、更には当時の剣道形についての実状が述べられていることから、これらについても分析を加え、当時における剣道形の実体や技術の深層について明らかにする。
平成28年度においては、(1)についての作業が終了し、「研究実績の概要」にも示した通り、(2)の段階へと研究が進んでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度は、主に以下の課題を達成すべく研究を推進する計画である。
・平成28年度に解読した討議記録の内容をもとに、「小太刀形三本」に焦点を定め、討議された内容(意見)の分析を行う。
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Causes of Carryover |
当初、平成28年度の計画として、複写不可(貴重書等)の史料収集にあたっては、研究代表者が所蔵機関(大学図書館等)へと足を運ぶことを予定したが、当該年度中にそれを実行することができなかったため、その旅費分が次年度に移行することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に計画していた史料収集を平成29年度に行うため、その旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)