2016 Fiscal Year Research-status Report
現代インド・英国のカーストとダリト運動をめぐるグローバル化の重層的展開
Project/Area Number |
16K16659
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
鈴木 真弥 東京外国語大学, その他部局等, 研究員 (30725180)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 南アジア / インド / カースト / ダリト運動 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、①日本・インド・英国における文献収集と分析、②インド・英国での現地調査、③国際会議での研究報告、さらに市民講座の企画および運営など様ざまな活動を実施した。まず、インド・英国におけるダリト運動の概観を把握するため、2016年7月~8月の両国出張で、現地で最新の文献資料を収集し、運動の指導層や参加者、大学研究者に対する聞き取りを実施した。英国出張では、バーミンガム、コヴェントリーにおいて、ダリト移民の状況に精通しているワーウィック大学とウォルヴァーハンプトン大学の研究者および運動の指導層に面会し、基礎情報や調査に関する助言を得た。ダリト移民が多く集まるシク教寺院兼カースト団体事務所では、日曜礼拝の参与観察を行った。こうして得られたインフォーマントとのつながりを通じて、次年度以降の調査を見通すことができたことは大きな収穫である。ロンドンでは、集中的に先行研究を収集した。 インド出張では、デリーで最新の文献収集を行い、プネー大学女性学センターの研究者から協力を得て、本科研が研究対象としているカーストコミュニティ(バールミーキ)のローカルな祭りの参与観察を実施した。プネーでは、北・西インドのムスリムやダリトの間で広く信仰されている中世の神が毎年祀られている。先行研究で注目されてこなかったこのような行事を調査することで、同カーストのローカルな信仰世界およびカースト意識を明らかにすることができるのではないかと考えている。 今年度は、国際社会学会において、デリーのバールミーキによる訴訟活動について報告を行った。また、研究を社会に還元させる取り組みとして、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター市民アカデミア講座「インド万華鏡②―衣食住から紡ぐ多文化共生世界」を企画した。移民の問題は、昨今の政治情勢により関心がさらに高まっているテーマであり、多くの参加者を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・研究計画書で示した主題D「グローバル化がインド国内外のダリト運動、人々のカースト意識に与える変化」を概観するために、インド・英国で資料収集と聞き取りを行い、調査に着手することができた。また、二年次以降に行う調査の見通しを得ることができた。 ・国際学会での成果発表、および市民講座を企画することにより、本研究の意義と課題を確認することができた。 ・今年度中の成果出版は間に合わなかったが、来年度以降に予定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査成果に依拠して、よりまとまりのあるデータを蓄積するために、現地調査を中心に進める。また、主題Dにかんする研究報告および英語出版にむけた執筆に取り組むことも検討する。
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Causes of Carryover |
追加で予定していた2017年2月のインド出張を体調不良により、実施することができなかった。本研究の調査には環境の厳しい地域も含まれており、さらに年々悪化している大気汚染や高額紙幣廃貨による社会混乱をかんがみて、実施を次年度に変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インド・英国における現地調査として使用予定。
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Research Products
(3 results)