2017 Fiscal Year Research-status Report
日系アメリカ人の朝鮮戦争従軍と社会参入:ジェンダーとエスニシティの視点から
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16K16670
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
臺丸谷 美幸 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (40755394)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エスニシティ / ジェンダー / 二世兵士 / 朝鮮戦争 / 戦争の記憶 / 日系人強制立ち退き・収容問題 / 日系人朝鮮戦争退役軍人会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、昨年度に続き、単著執筆と国内外での資料、文献収集と分析を行った。また海外調査として8月13日から9月2日の日程で米国カリフォルニア州にて、資料調査及び日系二世の退役軍人へのインタビューを実施した。ロサンゼルスでは日系人朝鮮戦争退役軍人会(JAKWV)の協力の元、二世ウィークでの退役軍人パレード、それに伴うイベント、同会の会合に参加するなどの参与観察を行った。また北部カリフォルニアでは、サンノゼ日系人博物館(JAMsj)関係者、サクラメントの調査対象者に対してもインタビュー調査を実施した。インタビューでは、調査対象者の従軍動機、従軍経験、さらに朝鮮戦争GIビル法による軍人恩給が従軍後の彼ら/彼女らの生活に与えた影響を解明するため、就職や進学問題などについても詳細に尋ねた。資料調査ではカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のチャールズE.ヤングリサーチ・ライブラリーが所蔵するスペシャルコレクションやカリフォルニア大学バークレー校のバンクロフトライブラリー所蔵の資料を閲覧した。資料調査ではインタビューでは知り得なかった調査対象者の社会活動の記録などを発見することができた。これは今後、多角的な視点で調査対象者を理解するための貴重な資料となるだろう。これらの調査結果を基に、平成30年2月、日本比較文化学会3支部合同研究会(於西南女学院大学)にて口頭発表を行った。当発表では朝鮮戦争期の二世兵士の志願動機に着目し、軍隊への参入が彼らの当時の社会的立場や経済的事情と密接にかかわっていたことを確認した。今年度の成果を踏まえ、次年度は論文刊行、単著刊行を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の特筆すべき成果は、夏期に実施した海外調査である。約3週間の調査では、過年度にインタビューを実施した調査対象者を再訪問し、再調査を行う他に、例えば退役軍人会の活動に同行し、より多くの時間を共にした。結果、これまで知り得なかった知見や、退役軍人の現代における戦争顕彰活動や日系二世としての社会活動について詳細を教示頂くことができた。調査対象者は80、90歳代の高齢者であり、日系二世の明らかになっていない歴史を記録していくためにも、今後も継続した調査が必要である。また海外調査で得られた情報、知見を基に日本比較文化学会にて口頭発表を行った。現在、当発表を基とする投稿論文を執筆中である。今年度は調査データの整理と資料分析、執筆に多くの時間を割いたため、年度内の論文刊行ができなかった。これは次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年にあたる次年度は、単著刊行と論文刊行を目指す。これまで得られたインタビューデータ、資料を継続して分析していくことに加え、短期間の米国カリフォルニア州とワシントンD.C.での追加調査を計画している。また、研究開始当初は、日系アメリカ人とその他の朝鮮戦争期の「エスニックマイノリティ兵士」の事例を比較検討することを考えていたが、前年度、今年度に実施した調査を踏まえると、むしろ「日系二世の朝鮮戦争退役軍人」だけに留まらない調査対象者たちの多様な人生経験を掘り下げ、注目することが重要であると判断した。特にカリフォルニア州、あるいは西海岸諸州の出身者である彼らは、10代、20代の若い時期に第二次世界大戦期の日系人強制立ち退き・収容を経験しており、これらの経験が日系二世としてのエスニックアイデンティティ形成に甚大な影響を及ぼしている。つまり、日系二世の退役軍人としての活動の他に、日系二世の退役軍人による「日系二世」としての社会貢献や活動についても広く調査することで、より多角的な視点で調査対象者をとらえ、朝鮮戦争従軍経験者から見る新たな二世像、二世論を構築したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、英語論文作成に必要な英文校閲料が、論文の執筆スケジュール変更のため今年は生じなかったためである。次年度、英文校閲を発注する際に使用する。
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Research Products
(1 results)