2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16683
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 直彰 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD) (60771897)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 存在論 / 様相 / 本質 / 存在論的依存 / 実体 / 存在論的カテゴリー / 一元論 / 世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究における実質的な形而上学的探究の準備作業として、現代オントロジーにおいて中心的な役割を果たすいくつかの概念を明確化する作業に取り組んだ。具体的には、まず、「本質」概念を「必然性/可能性」概念との関連において考察した。その際には、クリプキによる可能世界意味論行以降主流となった、一種の必然的性質として本質的性質を定義するアプローチが抱える欠点と、形而上学的様相を本質に関する事実へ還元するアプローチがもつ利点を検討した。そのうえで、「存在論的依存性」概念と「実体」概念ついて、「本質」概念や「形而上学的説明」概念に基づいてそれらを定義するアプローチに焦点をあてながら考察した。特に、「本質」概念に基づいて種々の「存在論的依存性」を定義するK. Fineの議論、および、それへの反論と「形而上学的説明」概念に基づく代替案を提示する F. Correiaの議論を集中的に検討した。これらの取り組みにより、「存在論的依存性に基づくカテゴリーの個別化(と関係づけ)」というアイデアが精緻化されるとともに、〈絶対的な全体性をもつものとしての世界は「カテゴリー」概念の適用に関して理論的困難を抱えるものの、特異な「実体」性をもつ単一の個体として捉える余地がある〉ということが明らかになった。また、それにより、「もっとも基礎的な存在者は全体としての世界だけである」というテーゼ(先行性に基づく一元論 Priority Monism )を世界の実体性に基づいて擁護するアプローチに関して、「実体」概念の明確化をふまえて具体的に展開する見通しが得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)基礎的概念の明確化による準備作業と、(2)それに基づく実質的な形而上学的探究という二つのパートに分かれるものとして構想されており、本年度は第一のパートに関して一定の進展がみられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に行った準備作業をふまえて、絶対的全体としての世界の存在論的身分をめぐる考察に本格的に取り組む。
|