2018 Fiscal Year Annual Research Report
Canonization and Veneration of Modern Saints and International Relations of the Russian Churches
Project/Area Number |
16K16703
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 沙奈美 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 助教 (50724465)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロシア / 宗教社会学 / ロシア正教 / ディアスポラ / 聖人崇敬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀に入ってからロシア正教会および亡命ロシア人の結成した在外ロシア正教会が行った列聖を手掛かりに、正教会の歴史認識や政治的立場、さらには亡命教会との関係からソ連外交チャンネルとしての正教会の位置づけを明らかにしようとするものである。 具体的には、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世とその家族を取り上げた。ロシア本国におけるニコライ二世崇敬の現状について、ニコライ二世一家銃殺の地であるエカテリンブルグでのフィールドワークや参与観察を行った。しかし、ロシア正教会の外務省ともいうべき渉外部のアーカイヴ資料は閲覧不可であったため、かつてここで勤務していた聖チーホン人文正教大学教授のアンドレイ・コストリューコフ教授の研究指導の下、在外ロシア正教会のアーカイヴでの調査を行った。さらにこのアーカイヴ調査からは、皇帝に対する崇敬の始まりから列聖に至るプロセスを分析した。 ロシア革命後の亡命ロシア社会においては、次期皇帝を擁立するという理由で、ニコライ二世の生死に関心を寄せるものもいたが、次第にその悲劇的な死が重視されるようになった。後に上海主教として知られるイオアン・マクシモーヴィチは皇帝を苦難の聖者ヨブになぞらえる説教を行い、崇敬の神学的素地を形成した。彼の説教は、革命を体験した亡命第一世代の罪の意識を反映したものであると同時に、国内に残る正教徒への弾圧を怖れて明確なソ連体制批判を避けるものであった。一方で1981年の列聖は、革命批判の立場を明確に打ち出し、ロシア的伝統に関心を寄せるソ連の異論派や信者共同体への呼びかけという性格を持っていたことを明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Book] Шестнадцатые Романовские чтения (The Sixteenth Romanov's Readings)2018
Author(s)
A.N. Avdonin, S. Takahashi, L.A. Somova, L.P. Markova, M.I. Yurievich, M. Pronina, N.A. Paromova, J. Kormina, M.B. Ognetova, V.V. Shitov, S. Shevyrin, N.B. Neuimin, N.V. Ardanova, A. Karfidov, M.N. Nachapkin, A. Zhidanov, A. Sherer, E.A. Kurlaev, O.K. Aksyonova, M.O. Logunova
Total Pages
368
Publisher
Издательство Квадрат(Kvadrat Publisher)
ISBN
978-5-91357-068-0