2018 Fiscal Year Research-status Report
摂関院政期における漢学思想研究の新たな領域と方法の開拓
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16K16711
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森 新之介 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (80638718)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 顕密体制論 / 源頼朝 / 鎌倉幕府 / 神国言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究成果を研究ノート1本、学会発表2回として公表した。 申請時は予定していなかったが、学会発表「鎌倉期思想史研究と顕密体制論」を行った。そもそも鎌倉時代の思想史については、日本史学や国文学、思想史学など多様な領域で研究が繰り広げられてきた。しかし現在、それらの諸領域で知見が十分に摺り合わせられているとは言い難い。本発表では、顕密体制論という日本史学の理論を取り上げ、思想史研究者の一人として問題の整理を試みた。 その内容の一部は、査読付き研究ノート「源頼朝と天下草創」(『鎌倉遺文研究』第42号)として公表した。本稿では、源頼朝が文治元年(1185)に用いた「天下(之)草創」という表現の意味を、和漢の用例や頼朝の文脈、周囲の反応などから考察した。そして、その「草創」は創始でなく草率すなわち乱雑不整の意であったことを論証した。後世の日本人の感覚では、「天下草創」は天下創始としか解釈できない。しかし当時の漢学の教養ある人々には、「天下草創」は天下草率としか解釈できなかったらしい。このことは、鎌倉時代の政治感覚を理解するにも、漢学の知識が必要であることを物語っていよう。 研究計画における個別研究d)「神国思想と日本礼制」として、学会発表「平安以前の神国言説」を行った。その内容は論文として学術雑誌に投稿し、現在査読中である。査読を通過したら来年度の報告書に記載したい。 その他、個別研究e)「摂関院政期における学問と詩文」として、研究ノートを執筆していたが完成に至らなかった。そのため補助事業期間を延長し、次年度の投稿刊行を目指すことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は本来の最終年度であった2018年10月にシンポジウム「日本中世思想史研究に明日はあるか」を企画運営し、また報告者として登壇した。本研究課題にとっても有益な結果が多く得られたものの、このシンポジウムは申請時に予定していなかったため、研究計画の遂行に数か月の遅れが生じてしまった。補助事業期間を1年延長することで、当初の研究計画を完遂する。
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Strategy for Future Research Activity |
3年度目から執筆している研究ノートの完成と刊行を目指す。
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Causes of Carryover |
前述のように、研究代表者は本来の最終年度であった2018年10月にシンポジウム「日本中世思想史研究に明日はあるか」を企画運営し、また報告者として登壇した。本研究課題にとっても有益な結果が多く得られたものの、このシンポジウムは申請時に予定していなかったため、研究計画の遂行に数か月の遅れが生じてしまった。補助事業期間を1年延長することで、当初の研究計画を完遂することにした。
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Research Products
(3 results)