2016 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代中期の女流文学者荒木田麗女の歴史物語・連歌作品研究
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16K16757
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
雲岡 梓 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (30732888)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歴史物語 / 月の行方 / 長門本平家物語 / 荒木田麗女 / 伊勢 / 近世連歌 / 女流文学 / 三の友 |
Outline of Annual Research Achievements |
荒木田麗女の歴史物語に関する研究を深めるため、三重県の伊勢市立図書館ふるさと文庫に所蔵される書簡や聞き書き等の郷土資料や、神宮文庫所蔵の『月の行方』最善本を調査した。調査の結果に基づき、論文「荒木田麗女の歴史物語『月の行方』と長門本『平家物語』」を『語学文学』(北海道教育大学)55号に、「荒木田麗女の歴史物語『月の行衛』(神宮文庫所蔵本)上巻の翻刻」を『日本文芸研究』(関西学院大学)68巻2号に発表した。 この三重県の調査では、伊勢市立図書館、神宮文庫の他、麗女の墓所のある浦口墓地や、麗女の菩提寺であり過去帳を所蔵する等観寺、八日市場町の旧宅跡、麗女がたびたび連歌を行っていた蓮台寺跡、図書を借りだしていた豊宮崎文庫跡等を踏査した。その中で墓地の管理者や菩提寺の住職に面会することにより、文献の形では伝わらない、地元に伝えられている口碑を採取することができた。採取した伊勢宇治山田における口碑をもとに、「伊勢の才媛荒木田麗女」を執筆し、伊勢神宮発行の雑誌『瑞垣』236号に発表した。 また、麗女の和歌・連歌・和文の三種を収める和文資料『三の友』(富山市立図書館蔵)を調査し、論文「荒木田麗女『三の友』の翻刻」を『釧路論集』(北海道教育大学)48号に発表した。 さらに本年は、大学院生時代より研究を続けてきた麗女の連歌・擬古物語・和学・紀行文・漢詩について体系的にまとめた著書、『荒木田麗女の研究』を、和泉書院より出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
荒木田麗女の出身地である三重県伊勢で長期に渡って調査を行ったことにより、今後の課題研究のために必要となる紙焼き資料、口碑等を多数入手することができ、入手した資料の翻刻も行うことができた。また、翻刻や内容研究を行うことはできなかったが、名古屋大学附属図書館、国立国会図書館が所蔵する麗女最大の歴史物語『笠舎』の紙焼き資料も入手することができた。それらをもとにして、翻刻を含め、当該年度中に本課題研究に関わる論文5編、単著1冊を発表することができたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
残存部分だけでも33巻が存在する麗女最大の長編歴史物語『笠舎』について、入手した紙焼き資料の翻刻を行い、北海道教育大学紀要、もしくは関西学院大学紀要上に順次発表してゆく。そして翻刻をもとに内容の考察を進め、『笠舎』の成立事情や特徴、典拠となった歴史書等を明らかにする計画である。 また、翻刻を行った『三の友』をもとにして、麗女の連歌に用いられる歌語・単語を分析し、中世連歌との相違点や里村家連歌との共通点を探る。麗女連歌に見られる特徴が、麗女独自のものであるのか、近世連歌特有のものであるのかを調査し、近世連歌の歴史の中での麗女の位置を明らかにする。
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Research Products
(9 results)