2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16841
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
竹村 明日香 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (10712747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本語学 / 上方落語 / 京阪方言 / コーパス / 上方はなし |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、落語雑誌『上方はなし』に収載された五代目笑福亭松鶴の速記落語(全49話)のテキストデータ化を完了した。「上方はなしコーパス」と名付けたこのフリガナ情報つきのデータは、現在クラウド上にて複数の日本語学研究者と共有しており、近現代京阪方言のデータとして(限定的ではあるが)活用されている。昭和4年刊行の『名作落語全集』も少しずつデータ化を進めており、来年度にはこれらのデータをまとめて一般に公開する予定である。 また、国立劇場資料閲覧室や大阪府立中之島図書館、大阪府立上方演芸資料館など各地の資料室に赴き、明治から昭和初期にかけての上方速記落語を収集した。その結果、枝鶴を名乗っていた頃の五代目笑福亭松鶴の速記落語や、幕末生まれの二代目曽呂利新左エ門などの貴重な速記落語を集めることができた。現在はこれらの資料の特質(特に言語的特徴)をまとめているところである。 さらに、「上方はなしコーパス」の実質的運用に向けて協力者を増やすことに努めた。まず現役の上方落語家とコンタクトを取り、落語家や芸能愛好家が利用できるコーパスの仕組みについて検討した。また、表記研究者や文法研究者とも相談し、本コーパスの作成・活用・宣伝において協力し合うことを確認した。加えて国立国語研究所のコーパスプロジェクトにも参加を許可してもらい、形態素情報の付加を行う準備を整えた。 以上のような研究活動に基づいて、本年度は論文を1本発表した。また、帝京大学の「近代日本文化研究」の授業にゲストスピーカーとして招待され、本研究内容について講義した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は[1]上方落語資料の所在調査・入手、[2]明治~昭和初期の上方落語のテキストデータ化、[3]語彙調査の3点を中心に行った。 現時点では[1][2]は順調に進んでおり、特に問題はない。[1]は各地の資料室・図書館に赴くことでおおよそ達成できた。[2]のテキストデータ化でも、プレーンテキストデータの作成が完了し、研究者が使用する体制も整いつつあることから、ほぼ予定通りの進捗であるといえる。 一方[3]には若干の遅れがある。本年度は資料収集とテキストデータ化に比重を置きすぎたために、語学的な分析がやや遅れてしまった。よって今後は上記のコーパスデータを活用しつつ、加速度的に調査を進める予定である。 しかし全体としてはほぼ当初の予定通り進行しているため、「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の4点を中心に研究を行い、特に[2]~[4]の成果を発表し、論文執筆を行う。 [1]昨年度に引き続き、明治~昭和初期の上方速記落語を収集する。コーパスデータの元資料として役立てられるよう保存・保管の手続きを進める。 [2]前年度にテキストデータ化した「上方はなしコーパス」に形態論情報を付加する。その後、データをweb上に公開して、研究者のみならず一般の人々(落語愛好家など)にも活用してもらえるようにする。その際、コーパスデータには簡易な検索機能を付け、web上からも気軽に語彙調査が行えるような仕組みにする。研究の進捗次第によっては、昭和4年刊行の『名作落語全集』をテキストデータ化した「名作落語全集コーパス」も作成・公開する。 [3]上記のコーパスデータに基づいて近代京阪方言の語彙研究を行う。特に落語家の生年によって使用語彙に差があるのかを明らかにし、語彙の新旧交替の様相を明らかにする。特に、近世上方語と近代京阪方言、そして近代京阪方言と現代京阪方言の境界を明示化する。 [4]語彙調査の結果を結集させ、新たな京阪方言辞書の作成に取り掛かる。基本的には自立語中心の辞書を作ることとし、上方速記落語からの用例を多数引用して、典拠が明確な辞書の作成を目指す。
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Causes of Carryover |
人件費・旅費が当初の予定よりも少額で事足りたため、余った金額をおもに物品の購入に充てた。しかし、それらの物品購入の際にも、予想外の価格割引などがあり、当初の予定よりも低額で購入できてしまった。そのため最終的に若干の金額が残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として残った金額は、次年度の人件費・謝金に充てる予定である。次年度はコーパス公開に向けて大規模なデータ整理を行うため、人件費が予定額よりも上回る可能性がある。それらの補充に充てる予定をしている。 もし人件費・謝金に充てる必要がなければ、学会発表のための旅費や、物品購入に充てて有意義に使用する予定である。
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Remarks |
2016年12月8日(木)に帝京大学の講義授業「近代日本文学研究」(担当:細田明宏)にゲストスピーカーとして招待され、本研究について90分の講義を行った。
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Research Products
(1 results)