2017 Fiscal Year Research-status Report
岩手県内の近世石碑の数量分析および活用に関する調査・研究
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16K16912
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
兼平 賢治 東海大学, 文学部, 講師 (30626742)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 石碑 / 地域性 / 盛岡藩 / 仙台藩 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、設定した地域に残されている近世の石碑の総体を分析対象とし、さらに他地域と比較することによって、石碑から地域性を見出すなど、石碑のもつ資料的価値の可能性を見極めることにある。そのため平成28年度は、各自治体が刊行した石碑悉皆調査報告書などの調査成果のデータ化を進めたが、データ数として不十分なところもあったことから、平成29年度も継続してデータ化を進めた。その結果、岩手県内のほぼすべての自治体の石碑を網羅することができた。また、各調査報告書の項目を統一して、分析しやすいデータに構築し直した。これにより、平成30年度に予定している石碑分布の分析・研究が可能となった。 実地調査においては、紫波町教育委員会の協力を得て、平成29年度は佐比内地区の悉皆調査をほぼ終えることができた。紫波町が作成した調査報告書では紹介されていない新発見の石碑を数多く発見することができたほか、佐比内地区においては、近世期は金山地帯で多くの隠れキリシタンが存在したが、その墓と思われる石造物も数多く発見できた。屋敷神を祀る社には石碑とともに金精様もみられた。地域の独自の信仰が石造物から確認できた点は大きな成果である。平成30年は赤沢地区の石碑の悉皆調査を行うが、石碑文化の地域的特色を比較するうえで、佐比内地区の調査は大いに成果があった。台風により壊滅的な被害を蒙った岩泉町の石碑調査では、岩泉町教育委員会の協力のもと、安家地区で悉皆調査を終了し、現地報告会を開催して、地域の方々に研究成果を還元することができた。岩泉町は内陸と沿岸の中間地点にあり、近世期は沿岸から内陸に塩や海産物を運ぶ塩の道として牛が往来したが、岩泉町の石碑からは、牛馬供養塔が数多く確認された。馬産地であった盛岡藩においては馬頭観音の石碑の数が圧倒的で、牛馬供養塔から岩泉町の地域文化の特徴を確認できた点は大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に完了を予定していた岩手県内の石碑データベースが未完成であったが、平成29年度に、より多くのデータを取り込んで、充実した内容のデータベースを完成させることができた。また、項目を統一したことで、平成30年度の分析・研究がしやすくなった。 現地調査においては、紫波町の調査のほか、台風被害で石碑の残存状況が心配された岩泉町の調査を併行して行ったことから、当初計画していた矢巾町と盛岡市の調査が遅れているが、紫波町と岩泉町の石碑悉皆調査からは、新たな成果を得ることができた。また、石碑から地域性を見出すという、本研究の課題についても、充分な見通しを得られるところまで、調査を進めることができた。さらに、現地報告会を行い、研究成果を還元することもできた。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展している、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、本研究の課題を克服するために実施してきた紫波町と岩泉町における現地調査を完了させるとともに、構築したデータベースと調査結果の分析と研究を行うことにしている。紫波町については、紫波町教育委員会と地元の方の協力を得ながら、赤沢地区の悉皆調査を完了し、彦部・佐比内・赤沢の3地区から、紫波町の石碑文化の地域性を明らかにする。また、岩泉町については、岩泉町教育委員会と地元の方の協力を得ながら、小川地区と小本地区、有芸地区の悉皆調査を完了し、安家・小川・小本・有芸の4地区から、岩泉の石碑文化の地域性を明らかにする。いずれも教育委員会と地元の方の協力を得られることから、調査遂行に支障はない。 データベースと調査結果の分析と研究に関しても、充実した内容のデータべースを構築することができており、また、現地調査では本研究の課題を克服できるだけの成果を得られていることから、支障なく分析と研究に取り組むことができる。研究協力者の八木光則氏とは、研究成果の共有ができており、この点でも支障はない。教育委員会の協力を得て、現地報告会も実施する予定でいる。研究の還元という点においても、支障はない。
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Research Products
(3 results)