2016 Fiscal Year Research-status Report
戦後米国の太平洋戦略とグアム統治政策―米海軍政府の土地接収とチャモロ住民の対応―
Project/Area Number |
16K16933
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池上 大祐 琉球大学, 法文学部, 准教授 (00633562)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 米海兵隊 / 米海軍政府 / 米軍基地 / ジョン・コリア / 民族問題研究所 / アメリカ市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1940年代後半から1950年までのアメリカのグアム土地接収政策の実態とそれに対するチャモロ住民の対応について明らかにすることを目的とする。平成28年度は主に、米海軍政府による土地接収政策(主に基地拡張政策)の実態解明に必要な史料収集を中心的に行った。
具体的には、2016年8月に、アメリカ国立公文書館新館にて、Records of the U.S. Marine Corps(Record Group 127)から“Guam Island Command”(1944-46)の史料群を、Records of Chief of Naval Operation(Record Group 38)から“Records of the Base Maintenance Division, CNO, 1941-1953”を収集した。さらに、米海軍政府によるグアム統治を批判する言論活動を行ったジョン・コリア文書(John Collier Papers)を、トルーマン州立大学図書館(ミズーリ州)にて収集した。特に、米内務省インディアン局長を辞任し、アメリカ市民権構造についての議論を展開するための「民族問題研究所」(Institute of the Ethnic Affairs)を創設した1945年以降の文書メモや議事録、定期刊行物等を収集した。帰国後、ジョン・コリア文書のなかに収められていた定期刊行物のGuam EchoおよびNews Letterの読み込み・翻訳作業を中心に進めた。
これらの史料は、グアム統治に対するアメリカ側の動向を示すものであるが、従来は「外交史」の範疇であった軍事基地拠点形成の実態と、従来は「内政史・社会史」の範疇であったアメリカ市民権構造への当時の認識の在り方を統合して論じていくための史料を入手できたことは極めて重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短期滞在の史料調査旅程の範囲内では、おおむね順調に進展している。しかし、昨年度に収集した米海兵隊部隊記録は、1944年から1946年までの期間のものであり、米海軍による軍政統治が終える1950年8月までを包括した、統治や土地政策に関する史料の発掘がまだ完了できていない。その点は今年度の課題としたい。
ジョン・コリアの活動については、「アメリカ知識人のグアム認識に関する一考察-1945~50年における民族問題研究所(IEA)の活動を中心に―」と題する報告をアメリカ学会自由論題報告(2017年6月)にて行うことが決まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(特に平成29年度)の研究の推進方策は、以下の2点となる。1.ジョン・コリアの活動に関する研究の活字化。2.昨年度収集した“Guam Island Command”の読解・翻訳、および米海軍によるグアム統治文書(軍政統治の日報のようなもの)のワシントンでの再調査。
1については、ジョン・コリアについての個人史、「民族問題研究所」の定期刊行物の分析、「民族問題研究所」の活動全般の分析、といった具合に、3本の論文化を検討中である。その際、ジョン・コリアとともに言論活動を加わったローラ・トンプソン(文化人類学者で1930年代にグアム踏査の経験をもつ)についても扱うことを予定している。ローラ・トンプソン文書はグアム大学ミクロネシア地域研究センターに所蔵されており、基本的な文書群はすでに入手済であるが、必要に応じてグアムへの再調査も視野に入れている。
2については、“Guam Island Command”の分析を進めると同時に、機密解除に2週間以上を要することを考慮にいれた旅程を組み、アメリカ国立文書館新館での米軍軍政統治に関する記録発掘につとめる。
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Causes of Carryover |
物品費(ファイル等)の購入分として確保していた分が残額として残った形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費(ファイル等)の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)