2016 Fiscal Year Research-status Report
行政機関による制定法解釈に対する司法審査手法の解明
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16K16992
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
海道 俊明 近畿大学, 法務研究科, 講師 (40626933)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Chevron判決 / 行政機関による制定法解釈 / 敬譲型司法審査 / 立法規則 / 解釈規則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いわゆるChevron判決(1984年)を主な研究素材とし、行政機関による「法解釈」に裁量(対司法裁量)が認められる余地があるかを究明するものである。平成28年度においては、Richard J. Pierce(ジョージワシントン大学)によるADMINISTRATIVE LAW TREATISEをはじめ、諸文献を収集しリサーチを行った。 その上で、①1984年以前における、米国での行政解釈に対する司法審査姿勢について、②Chevron判決によって示された法理の性質理解と敬譲型審査の根拠論について、③Chevron判決の有する二段階(two-steps)型審査の構造分析について、④審査手法・審査密度について、⑤Chevron法理の適用範囲について、整理を試みた。①、②については脱稿済みであり、成果を平成29年6月頃に公表する予定である。 また、平成29年度に研究予定であった、我が国における行政解釈に対する司法審査にも若干目を向け、整理を試みている。とりわけ、法律の授権を受けて制定される法規命令によって示される行政解釈と、そういった授権のない行政規則(とりわけ裁量基準や解釈基準といった規範)によって示される行政解釈の違いに目を向け、考察を加えている。つまり、解釈が示される媒体の違いによって、具体的に司法審査密度にどのような影響が出るかを究明しようと試みているところである。これらについては、平成29年3月に行われた関西行政法研究会において、既に一部研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、平成28年度においては基本的に米国にのみ目を向けて研究を進めることとしていた。そして、実施計画通り、同国における連邦巡回区控訴裁判所及び連邦最高裁判所の判例をリサーチし、またそれらに関する諸論文を精査し、①1984年以前における、米国での行政解釈に対する司法審査姿勢、及び②Chevron判決によって示された法理の性質理解と敬譲型審査の根拠論といった点については、脱稿済みとなっている。 また、研究実施計画では平成29年度での実施としていた、我が国における行政解釈に対する司法審査についても、最高裁判例を中心にリサーチを進め、一部は研究会において報告を行っており、29年度の研究へスムーズに移行できるように心がけてきた。 もっとも、米国における研究が全て完了しているわけではなく、最新の論文等も含めて、なお継続して研究を行う必要があり、自己点検としては「おおむね順調に進展している」との区分とすることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成28年度の研究課題である、米国における行政解釈に対する司法審査論について、引き続き業績の公表を目指すべく、連邦巡回区控訴裁判所及び連邦最高裁判所の判例や諸論文についてリサーチを継続し、③Chevron判決の有する二段階(two-steps)型審査の構造分析、④審査手法・審査密度、⑤Chevron法理の適用範囲、といった点について研究の精度を上げていく予定である。具体的には、29年度中の脱稿及び公表を目指す。 また、平成29年度の研究課題である、我が国における行政解釈に対する司法審査論についても、平成29年3月に実施した研究報告を基礎としつつ、他の研究者から受けた指摘を咀嚼・消化し、整理を試みていきたいと考えている。膨大な判例・裁判例を整理する必要があり、データベース等を駆使して迅速にリサーチと整理を実施していく予定である。 その上で、研究の集大成として、米国におけるChevron法理の比較法的価値についても研究を試みたいと考えている。米国と我が国とでは制度的な障壁もあるところであり、直接の概念輸入には慎重にならざるを得ないが、私見としては、参照可能性は認められるものと現時点において推察している。
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Causes of Carryover |
応募者は、本件科研費の応募時点においては、時間的に余裕のある平成28年度の夏季に集中して旅費等を執行し、種々のリサーチを行う予定であったが、応募後に、法務省からの依頼で司法試験予備試験考査委員(採点委員)へと着任することとなり、当該業務との兼ね合いで旅費を執行することが困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においては、一定の期間に旅費の執行を集中させるのではなく、1年を通して偏重なく旅費等を執行ていていく予定である。 また、書籍等に関しても、引き続き積極的な執行を心がける予定である。
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Research Products
(1 results)