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2017 Fiscal Year Research-status Report

企業犯罪における刑事司法を通じた構造改革の可能性

Research Project

Project/Area Number 16K17009
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

稲谷 龍彦  京都大学, 法学研究科, 准教授 (40511986)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords訴追延期合意・不訴追合意 / 法哲学 / 法と経済学 / 法と認知科学 / 企業犯罪 / 心理学的主体性 / 比較法 / 取引的刑事司法(司法取引)
Outline of Annual Research Achievements

本年度の研究実績一つは、経済学者とのコラボレーション及び認知科学者とのコラボレーションにより、新たな研究の方向性を見出したことにある。
すなわち、研究計画に基づき、オーストラリア国立大学在籍の経済学者と最適な企業犯罪統制の方法に関するモデリング及び従来研究の検討を行ったことにより、従来の企業犯罪対応モデルが主として静的な均衡の分析にとどまっていたため、刑罰の抑止効果の評価について改善の余地があるのではないかという結論が得られ、新たな共同研究プロジェクトを立ち上げることとなった。
認知科学者とのコラボレーションにより、心理的主体性研究を活用することで、哲学的検討をより実証的に把握することのできる可能性や、経済学的モデル研究に活用することのできる可能性を見出したことも、研究進捗の大きな成果といえる。心理学的主体性研究は、外界への影響力の認識とそのフィードバックとが外界への操作可能性としての心理的主体性の獲得に影響するという実証研究であるが、現象学から派生しているため、本研究の理論的基礎とする現代哲学と非常に相性が良い。また、事前分布確率を利用した制度均衡について経済学理論と接合することで、心理的主体性の喪失によるエージェントの行動変化をモデル化する可能性も開かれたといえる。これらは先行研究もほとんどない領域であり、今後大きな成果が期待される研究の方向性を見出したといえる。
また、本年度も我が国の実務家及びフランスの刑事法関係者と連絡を取り、我が国の最新の実務の現状の認識及び前年に施行されたフランスにおける新たな企業犯罪対応法制についての最新の比較法的知見の獲得にも務めた。
なお、こうした研究の進展とは別に、本研究課題と密接に関連する企業犯罪に関する学会報告を実務家とも協同の上一件行い、また論文を二本執筆し、一本はすでに公開され、もう一本については現在最終校正段階である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

当初の計画以上に進展していると判断した理由は、全体としての研究計画の進展が順調であることに加えて、想像を超える進展がいくつか見られたからである。
まず、実務家との交流及び比較法的知見の獲得という点では、当初の研究計画通り順調に進展している。すなわち、実務家と協働しながら研究報告を行う、論文を執筆する等の活動は本年度も順調に行われているし、海外の研究者等との交流や人脈の形成も進んでおり、最新の情報を絶えず入手できる状況にある。
また、法学論叢誌上において連載している論文も公刊されており、順調に成果の公表も行われつつあるといえる。
次に、法と経済学及び法と認知科学的観点からの進展は、想像を超える順調さで進んでいる。法と経済学的観点からは、本研究計画は当初既存の法と経済学的知見を活用するに止まるものであったが、経済学者との緊密な連携と意見交換により、経済学的観点からも新しい研究の方向性に踏み出そうとしているという意味で、当初の計画を超える進捗であると思われる。
また、法と認知科学の分野においては、心理学的主体性についての研究成果に接することができたことにより、当初哲学的な理論のレベルでの正当化しか視野に入っていなかった本研究について、実証的な観点からも理論的な検証や正当化を行う可能性が開かれたという意味で、当初の予定を超える進捗が見られたということができよう。
加えて、心理学的主体性研究を通じて、哲学・経済学・認知科学の枠組みを超えた連携を可能とする素地を築いたという点でも、本研究は想像を超える進展を見せているといえるだろう。

Strategy for Future Research Activity

今年度までの進捗により、法学・哲学・経済学・認知科学を横断するような、学際的な研究を進めていく素地は十分に整ってといえることから、引き続き、学際的な方法を積極的に活用して研究を推進したいと考えている。とりわけ、経済学者及び認知科学者との連携によって得られるところが大きいことから、本年度も引き続き研究会の開催や、訪問調査等を通じて、学際的知見の一層の深化・洗練に努めたいと考えている。可能であれば、海外ジャーナルへの投稿をも視野に入れつつ、共同研究を進捗させるつもりである。
また、実務家及び海外研究者等との人的関係の形成も進んでいることから、引き続き、実務及び比較法的知見を活用した研究の推進も続けたいと考えている。実務家サイドからは引き続き、共同による論文執筆や海外調査等の提案があることから、積極的に協働作業を行うことによって、最新の実務上の知見を獲得するように努めたいと思う。また、英米仏各国の研究者及び実務家との人的関係を通じて、最新の比較法的知見を引き続き摂取できるようにも務める予定である。
関連文献については十分に集まってきており、またそれを活用するための知見についても十分に蓄積されつつあることから、本年度は連載論文の執筆と、関連する研究会での報告を中心に研究成果を外侮に発表して行きたいと考えている。もちろん、新たに必要な文献等が明らかになった場合には、適宜補充して行きたいと考えている。

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた理由は、研究が予想以上に進捗したため、前倒し請求を行い、不足額を補填したものの、入手予定だった書籍が一部年度内に入手できなかったためである。
したがって、書籍の入手に充てられる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 企業犯罪対応の現代的課題(二)-DPA/NPAの近代刑事司法へのインパクト2017

    • Author(s)
      稻谷龍彦
    • Journal Title

      法学論叢

      Volume: 181-3 Pages: 22-67

    • DOI

      ISSN03872866

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 企業犯罪における取引的刑事司法2017

    • Author(s)
      稻谷龍彦
    • Organizer
      刑法学会関西部会共同研究

URL: 

Published: 2018-12-17  

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