2016 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉法人の内部留保をめぐるアカウンタビリティ構築プロセスの研究
Project/Area Number |
16K17218
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中澤 優介 愛知学院大学, 商学部, 講師 (30755856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アカウンタビリティ / 倫理的暴力 / 他者 / 複数価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会福祉法人での内部留保の会計処理を取り上げ、この会計処理の設定によってアカウンタビリティが新たに構築されるプロセスを研究している。 本年度は、実際のアカウンタビリティの履行において想定される責任と、そのアカウンタビリティの履行者が本来的に果たすべき責任との間に「ズレ」が生じてしまうという問題の構造に関しての理論研究を進め、その成果を論文として発表した。当該理論研究においては、アカウンタビリティの履行およびその履行の前提となる責任関係を、暴力批判という観点から分析した。この分析視角のもと、倫理的暴力という、倫理や規範が孕む暴力性に焦点を当てることで、我々が依拠する倫理や規範のもとで想定される責任やその責任を果たすためのアカウンタビリティの履行も暴力性を孕むことを免れ得ないということを明らかにし、そのような暴力を緩和・解体するアカウンタビリティの在り方について規範的に考察を行った。本研究で対象とする社会福祉法人は、担う役割の公益性の高さを考えても、経済的価値に基づく倫理や規範に基づくアカウンタビリティでは履行されない責任関係が存在すると考えられ、このような責任関係がアカウンタビリティ履行の局面においても認識され、その責任が他の責任関係によって阻害されることなく果たされることが求められる。したがって、この点において暴力批判という分析視角からアカウンタビリティを捉えた当該理論研究は重要な意義を持つものである。 また本年度は、社会福祉法人の内部留保が問題となった背景や内部留保に関する新たな会計処理法が設定されるプロセスに関する文献調査を行った。この調査は、今後の研究において実施予定の、インタビュー調査や質問票調査の質問内容を考える際にも必要であり、この点において重要性を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた理論研究は順調に進んでいるが、暴力批判という分析視角のもと、アカウンタビリティを履行する際に生じる暴力とその暴力の緩和、ということをさらに精緻に分析していく必要があると考え、本年度はこの点を重点的に研究してきた。したがって、計画において実施予定であった医療・介護領域において想定されるアカウンタビリティの国による違いや歴史的背景の違いに焦点を当てた分析については十分に実施できておらず、この点においてやや遅れが生じているといえる。なお、この点については、次年度に重点的に分析を実施する予定である。 また、社会福祉法人の内部留保が問題となった背景や内部留保に関する新たな会計処理法が設定されるプロセスに関する調査においても、文献調査は順調に進んでいるが、インタビュー調査においては調整が難航しており、この点においてやや遅れが生じているといえる。しかし、インタビュー調査は研究計画上も複数年度に渡って実施する予定であり、当初の計画に対する大きな影響はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画していた理論研究については順調に実施している。当該研究に関しては次年度も継続的に発展・深化させ、さらに医療・介護領域において想定されるアカウンタビリティの国による違いや歴史的背景の違いに関する分析も踏まえ、その成果を論文化する予定である。さらに次年度は、内部留保の会計処理法導入に関して、本年度も実施した文献調査に加えて、社会福祉法人に対するインタビュー調査を実施する。これらの研究調査によって得られた知見については、学会だけでなく、その他の研究会でも積極的に報告を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、社会福祉法人の内部留保が問題となった背景や、新たな会計処理法が設定されるプロセスに関してインタビュー調査を実施する予定であったが、当該調査の調整が難航したことにより、本年度の研究計画のうち理論研究を優先的に進めた。したがって、主に旅費において未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査は次年度においても実施する予定であり、さらに次年度には学会およびその他の研究会での報告を行う予定である。したがって、次年度使用額はその旅費に充てることとしたい。
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Research Products
(1 results)