2018 Fiscal Year Research-status Report
感覚と運動の同期における刺激の空間的情報および社会的文脈の影響とその神経基盤
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16K17359
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小野 健太郎 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 特任助教 (30435870)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 聴覚 / 同期 / タッピング / 運動 / 充実時程錯覚 / 空虚時程知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、MRIを用いて同期タッピング課題における運動情報の有無に関わる脳部位の同定を行う予定であったが、MRI設備の度重なる故障に加えてMRI装置のリニューアルを行うことになり、実験を行うことができなくなった。そこで同期タッピングにおける拍分割の影響を調べるための行動実験を行った。 一般的に、同期タッピングではタッピングの方が刺激よりも数十ミリ秒単位で早くなるという現象が見られる。これは、刺激と刺激のインターバルに何も情報が存在しない場合(空虚時間)には、何か情報がある場合(充実時間)よりも短く感じるという充実時程錯覚が関係しているとする説がある。これを検証するために、音楽経験者と非経験者を対象として、音を刺激とした同期タッピング課題を行った。ひとつの音が繰り返される音列と、2種類の異なる音を間に挿入することで3音の繰り返しパターンを作る音列を用いて、どちらの音列でも同じ音にタイミングを合わせてタッピングさせたところ、音楽経験者ではどちらの音列でも同様な同期の精度を示した。一方非経験者では、パターンを作る音列において3音のどれに同期するかによって同期の精度は異なることがわかった。また、音の提示間隔を伸ばすとその効果は弱くなる傾向が見られた。以上の結果から、音楽経験者は音が単一音であろうが3音のパターンであろうが同じように認識して、どの音に対しても同じように運動を同期させることができる一方、非経験者では3音のパターンを形成する音列を単一音の音列とは違うものとして認識した結果、音の種類によって同期の精度が異なるという結果が得られたものと考えられる。この結果は平成31年度の日本心理学会において成果報告をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に関しては、当初はMRIを用いた研究を計画していたが、機器トラブルやリニューアルなどにより実験を行うことができなかった。そのため当初の予定とは異なる実験を行うこととなった。しかし実験の結果、感覚と運動の同期においてリズムパターンの知覚の有無が同期のしやすさに影響を与えることがわかり、有意義なデータが得られた。よって計画にやや遅れは見られるものの、研究には進展が見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度に行った実験をさらに進め、リズム知覚が感覚と運動の同期に与える影響を明らかにする。また、MRIのリニューアルが終わり使えるようになったので、MRIを用いて感覚と運動の同期に関わる脳部位を明らかにする実験も進めていく。
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Causes of Carryover |
機器トラブルなどによってMRIを用いた実験をすることができず、そのために主に参加者への謝金として計上していたものが消費できなかったため。次年度は延期した実験の参加者謝金と学会発表のための経費に充てる予定である。
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