2016 Fiscal Year Research-status Report
行動とホルモンレベルを指標としたイルカのストレスと心理学的幸福の評価手法の開発
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16K17367
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
酒井 麻衣 近畿大学, 農学部, 講師 (40512299)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス / 心理的幸福 / イルカ / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小型のハクジラ亜目(以下イルカ)の健全な飼育環境の実現と生活の質の向上を目指す。そのためには、飼育下での行動を野生本来の行動に近づけること、簡易にストレスや心理学的幸福を把握する必要がある。本研究では、飼育環境を改善するための情報を得るため、野生個体と飼育個体の行動の定量的な分析と比較を行う。また、行動を観察すると同時にストレスおよび幸福の指標となるホルモンを測定し、イルカのストレスや心理学的幸福が観察だけでわかる行動指標を見つける。 平成28年度は伊豆諸島御蔵島において野外調査を行い、ミナミハンドウイルカの行動配分を分析するためのビデオデータを得た。須磨海浜水族園・かごしま水族館・京都水族館にて、ハンドウイルカの飼育プール内および海水浴場と屋外水路における行動観察を行い、行動のレパートリーと時間配分を記録した。その結果、野外環境の方が遊泳速度が速く、静止することが少ないことがわかった。また、親和的個体同士の方が同調遊泳や同調呼吸を多く行うことが明らかになった。 餌の吐き戻し行動について、京都水族館のハンドウイルカを対象に詳細に調査し、プールに同居個体がいる時の方が、単独でいる時に比べて吐き戻しが少なかった。社会的刺激が、吐き戻しのような望ましくない行動を低減させることがわかった。 長期的ストレス指標とするための、ハンドウイルカの表皮中コルチゾール濃度の測定法の開発に成功した。さらに、表皮中コルチゾール濃度は、表皮サンプルすなわち垢が多く採取できた時ほど高いという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、野生および飼育個体の行動データを得ることができ、ハンドウイルカの表皮中コルチゾール測定法の開発にも成功したため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
表皮中コルチゾール濃度は、表皮サンプルすなわち垢が多く採取できた時ほど高いという結果が得られたので、今後、垢が多い時と少ない時の表皮中コルチゾール濃度、血中コルチゾール濃度、イルカの行動の比較を行い、表皮中コルチゾール濃度と行動との関係や、どのような状況で垢が多くなるのかといった垢の量とストレスとの関係を明らかにしていく。 心理的幸福の指標となる行動やホルモンについても調べていく。例えばβエンドルフィンなどが候補として考えられる。 和歌山沖の野生ハンドウイルカの調査については、遭遇率が低く十分なデータが得られない可能性があるので、他地域での調査を検討する。
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Causes of Carryover |
カメラやパソコンなどの機材において、新しいモデルが発売され、当初計画よりも安価なモデルを購入しても十分に調査の用が足りたこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ホルモン測定のための薬品や実験機材が、当初計画よりも多く必要であることがわかったため、それらの購入に充てる。
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Research Products
(3 results)