2016 Fiscal Year Research-status Report
微分方程式に対する汎用的並列構造保存数値解法の基礎理論構築と数値的検証
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16K17550
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮武 勇登 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60757384)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 常微分方程式 / 偏微分方程式 / 数値解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代科学の多くの分野で,長時間スケール数値計算の需要が高まっている.そのためには,微分方程式の数理的/物理的性質(例えばエネルギー保存則)を活用した構造保存数値解法が適切だが,計算機パワーのハード面の成長に伴い,現場のニーズも多様化・大規模化している現在,精度と計算コストのギャップといった問題がこれまで以上に顕著化している.これらの問題に対して,現状では,各分野の専門性や経験によって解決案が研究されているが,本研究では,より数理的/分野横断的な立場から,汎用性の高い高速かつ高精度な並列構造保存数値解法を開発することを目的とする. 本年度はこの目的に対して,主に時間離散化に焦点を当てて研究を行った.特に,構造保存数値解法の代表的な解法であるsymplectic解法に対して,本来のsymplectic性の条件を若干緩和し,緩和した分の自由度を活用することで,並列計算環境において,2次精度公式と同程度の計算コストで計算可能な4次精度公式を導出した.さらに,サイズが数千程度の幾つかの常微分方程式を対象に基礎的な数値計算を行い,symplectic解法に対して期待される挙動(長時間にわたる良いエネルギー保存性など)を確認し,また,理論的な計算量の見積りと実際の計算時間が大凡合致することを確認した. その他,次年度以降に偏微分方程式に対して研究を行うことを念頭に,Hunter-Saxton方程式などの偏微分方程式に対する構造保存有限要素スキームの構築やその解析を行い,また,複数の保存量を再現する数値計算法の検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では.本年度は,エネルギー保存解法に対して,高精度並列公式の構築を目的としていたが,逆固有値問題理論を利用するといった様々な検討を行ったものの,新しい公式の導出には至っていない.しかし,この難しさは当初からある程度予想されていたものであり,一方で,並行して行った偏微分方程式に対する研究は,次年度以降の計画を大きく先取りした形になっている.これらを総合すると,概ね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,エネルギー保存解法に対する高精度並列公式導出を引き続き検討する.また,初年度に検討したsymplectic解法の拡張において,symplectic性の条件を緩和したことによる影響を主に理論的な観点から詳細に調べる予定である.さらに,翌年度以降を見据えて,構造保存不連続Galerkin法と構造保存型時間離散化法の組合せについても検討を開始する.
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Causes of Carryover |
当初予定では,研究遂行のための数値計算に必要な備品等を購入する予定であったが,当該年度は基礎的な研究を主に行い,数値計算に関しては既存設備でまかなえたため,残額が出た.また,旅費に関しても残高が出ているが,これは,次年度以降により大規模・網羅的な数値実験を行い,理論と数値的検証をセットにしてより充実した成果発表を行う方が良いと判断したためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進展に応じて計算機や書籍,ソフトウェアなどの物品購入の増強に充てていく予定である.また,国際会議発表なども積極的に行っていく予定である.
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Research Products
(8 results)