2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16K17785
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
菊地 龍弥 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 任期付研究員 (80626581)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物性実験 / 液体 / 解析・評価 / 拡散現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画は3年計画であったが、廃止により初年度のみの実施となっており、その初年度で得られた成果について述べる。 初年度は、室温ガス物質実験環境整備を行う計画であった。具体的には、トップローディング型クライオスタットのセンタースティックの製作により、室温気体物質の液体での中性子準弾性散乱測定を行う予定になっていた。しかしながら、整備に向けて検討を行った結果、実際の製作にはより多くの資金が必要となることがわかった。その代わりに、ガスを封入するタンクを接続した試料セルを用いることで十分に実験可能であることがわかった。また、具体的な設計についても検討を行った。検討に時間がかかったため、予算の多くについて初年度の執行をあきらめ、翌年度に実施することにしていた。1つめの成果は、実施可能な計画を構築したことである。 実験環境の整備計画を立てるとともに、水素結合性液体の拡散現象の解明に向けて、整備前に可能な実験と緩和モード分布解析による解析を行った。実験の1つに、水の温度変化の測定である。これまでの研究から、液体の特徴を表す運動として、中間的な緩和時間を持つ中間モードが重要であると考えられる。水素結合を持たないベンゼンでは中間モードは分子回転であること、水の中間モードは強度が非常に弱く、単純な分子回転で記述できないことが分かっている。今回の実験から、水の中間モードの強度がほとんど温度変化しないことが分かった。分子液体でも、分子回転は制限され中間モードの強度が低くなることがあることが分かっているが、その場合は中間モードの強度が温度変化する。水の中間モードは、強度が弱く、温度変化もしないことから、根源的に分子回転と異なる可能性があることが示唆される。この結果は水素結合性液体の拡散現象の解明に非常に重要である。これが2つめの成果になる。他にも実験は行ったが現時点では解析が終わっていない。
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