2016 Fiscal Year Research-status Report
中緯度太平洋における水温・塩分変動の伝播:形成過程と熱帯域への影響
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16K17800
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 克徳 北海道大学, 理学研究院, 講師 (50604815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海洋物理・陸水学 / 十年スケール変動 / サブダクション / 中緯度海洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルゴフロートによる海洋の水温・塩分の観測データを用いて,南太平洋中緯度域での表層における振幅の大きい水温・塩分変動域の同定と,その亜表層へのサブダクション(沈み込み),またその形成過程に関する解析を行った.特に南太平洋での表層の変動域について,ポテンシャル密度25~25.5 kg/m3の等密度面上に着目した解析を行った.その結果,先行研究で示されていた南太平洋北東部から赤道へ流れる北側経路と,南太平洋中央部の高塩分領域から沈み込む南側経路の2か所があることを明らかにした.この表層で形成された顕著な水温・塩分変動は亜表層へと沈み込み,北側経路については平均流により移流され,約1年で赤道域へ到達し,赤道域の亜表層の水温・塩分場に影響することを統計解析から初めて示した.一方,南側経路では沈み込みの後,亜熱帯循環の平均流により約5 cm/sの速度で西方へと伝播し,3~4年をかけて南太平洋西岸域へと到達することが確認された.この南側経路では,興味深いことにサブダクションの経路上で顕著な正の塩分トレンドが示された.これは表層でのトレンドが亜表層へと伝播していることを示唆している.この塩分トレンドのメカニズムについても大気の再解析データを用いて解析を行い,海上風の変動に伴うエクマン輸送が重要な役割を果たしていることが示唆された.一方,高塩分領域の形成に重要である中緯度海洋上の降水についても解析を行い,高い海面水温の重要性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルゴデータを用いた南太平洋での沈み込みの研究結果を2017年度内に投稿する予定であり順調に進んでいる.またアメリカの共同研究者のNASAへの研究費の申請も採択されており,研究の更なる進展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度に得られたアルゴフロートデータを用いた研究成果について,アメリカの共同研究者による衛星観測の海面塩分データを使用して,海面塩分変動のさらに詳細な解析を行い,論文としてまとめ国際誌に投稿する.またCMIP5データの収集と予備的解析を行う.また海面水温・塩分変動の形成メカニズムについて,海面水温と降水量の関係に着目し引き続き解析を行う.
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Causes of Carryover |
例年3月に行われる国際学会が,次年度の5月に開催されることになったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果の国際学会での発表,および準備中の投稿論文に使用する予定である.
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