2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18017
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
重光 亨 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (00432766)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小水力 / インライン式小型ハイドロタービン / 二重反転形羽根車 / 軸方向圧力勾配 / 寸法効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
小水力発電は新エネルギーとして位置付けられており,その賦存エネルギー量は極めて大きい.農業用水や小規模な河川などではピコ水力と呼ばれる100W-1kW程度の発電が可能な箇所が多数存在する.小型ハイドロタービンの共通した大きな課題として効率が低いことが挙げられる.一方,数インチの管路式農業用水路や簡易水道などに直接設置できるインライン式小型ハイドロタービンへの要望も強いが,この分野に関する研究は十分進んでおらず,高効率なインライン式小型ハイドロタービンの確立が強く求められている.本研究では,インライン式小型ハイドロタービンとして二重反転形羽根車を採用し,その最高効率を実現する上で,重要な軸方向圧力勾配,寸法効果に関する以下の研究成果を得た. 1.小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適化 二重反転形小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配を調査するために,多点壁面圧力計測を実現する実験装置の設計,製作を実施し,ケーシング内面における軸方向の圧力勾配を高精度に計測できる計測環境を構築した.また,インペラ周りの詳細な流れ場を解明するために非定常数値解析を実施し,各羽根車における軸方向の圧力勾配と羽根間流れを明らかにすることができた. 2.小型化に伴う寸法効果が効率に及ぼす影響の解明 寸法効果がハイドロタービンの効率に及ぼす影響を明らかにすることは,小型ハイドロタービンに適したロータ設計を検討する上で重要である.そこで、非定常数値解析を実施し,チップクリアランス(5種類)および翼厚み(3種類)が小型ハイドロタービンの性能に及ぼす影響を調査した.その結果,本供試小型ハイドロタービンでは,強度上可能な限り翼厚みを薄くし,チップクリアランスc/R=0.017を選定することが妥当であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では小型ハイドロタービンの最高効率の実現を目的に,初年度においては以下の重要研究課題に取り組んだ. 1.小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適化 インライン式小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配を明らかにすることはその高性能化を実現する上で非常に重要である.そこで,試験部ケーシングを新規設計・製作し,多点壁面圧力計測を実現する実験装置と計測環境を構築し,軸方向の圧力勾配を計測した.供試ハイドロタービンの圧力勾配を実験的に明らかにすることができたが,軸方向圧力勾配の最適値については,実験装置および高精度な計測環境の構築に想定以上の時間を費やしたため,来年度調査を実施する.また,詳細な流れ場を解明するために非定常数値解析を実施し,羽根間の圧力分布や速度分布を明らかにした. 2.小型化に伴う寸法効果が効率に及ぼす影響の解明 インライン式小型ハイドロタービンは,通常の水車と比較し,羽根車に対するチップクリアランスや翼厚みの比率が相対的に大きくなる.これらの寸法効果がハイドロタービンの効率に及ぼす影響を明らかにすることは,その設計を検討する上で重要である.そこで,非定常数値解析を実施し,チップクリアランスおよび翼厚みが小型ハイドロタービンの性能に及ぼす影響を調査した.チップクリアランスが大きい場合,水車性能は急激に低下することが確認でき,工作精度やコストなどを考慮すると,チップクリアランスc/R=0.017を選定することが妥当であることが明らかになった.また,翼厚みを減少させた場合は,翼面での摩擦損失の低減効果により,高流量側では効率が1%程度向上することがわかった. 以上より,小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配や寸法効果が効率に及ぼす影響が明らかになったが,軸方向圧力勾配の最適値については,調査が実施できなかったため,研究の進捗状況についてはやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配と寸法効果が効率に及ぼす影響が明らかとなった.今後は軸方向圧力勾配の最適値に関する追加調査を実施すると共にRe数と効率の関係を明らかにする.その上で,最高効率を実現するロータの考案を行い,検証実験を行う. 1.ピコ水力発電におけるRe数と効率の関係 現地予備調査において明らかとなったインライン式小型ハイドロタービンの運転Re数250000を基準として,性能試験設備を利用し,Re数を増減させた際の効率の変化を調査する.ここでは,ピコ水力発電が運転されるRe数領域100000(超小型ピコ水力発電)~1000000(大型のピコ水力発電)でのRe数と効率の関係を調査対象とするが,調査すべきRe数の範囲が想定以上に広く,実験的評価が困難な場合は,CFDを活用し実験結果の補完を行う.さらに,各Re数領域における詳細な内部流れ調査および損失評価を実施し,効率改善余地を示した上で,各Re数領域での限界性能を明らかにする.また,初年度に実施できなかった軸方向の圧力勾配の最適値に関する調査を実施する. 2.小型ハイドロタービンの最高効率の実現 インライン式二重反転形小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適値,寸法効果を考慮した幾何学的制約の再検討結果,低Re数条件下におけるRe数と効率との関係をもとに新しいロータを設計・製作する.性能試験設備を使用し,目標値である最高効率70%を実現できるか検証実験を実施する.
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Research Products
(1 results)