2016 Fiscal Year Research-status Report
トカマクプラズマにおけるRF波動とシースの連成シミュレーション
Project/Area Number |
16K18336
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
河野 晴彦 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (70710846)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | シース / プラズマ波 / 高周波加熱 / トカマク型 / 磁場核融合 / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
トカマク型核融合炉において数種の周波数帯にわたる加熱法を適用する場合に生じうるRFシースの性質を理解するため、幅広い周波数・磁場に対応するシース・プラズマ相互作用を計算しうる2次元有限要素スキームを完成させた。具体的には、シース内の変位電流と荷電粒子の運動による電流の和を導体壁とシース先端の間の電圧と関連づけることにより新たなシース境界条件を導出し、それをプラズマ内部に適用されるMaxwell方程式と連成させて解く非線形有限要素法解析コードを開発した。容量性シースモデルに基づく従来の計算スキームではシース内の電力散逸を計算することができなかったが、今回開発したスキームでは、複素シースインピーダンスをシース境界条件に導入することにより電力散逸を計算することが可能となった。平成28年度では、一様なプラズマ密度の下で背景磁場に対応する磁力線が壁面(シース表面)に対して垂直に交わる場合の解析を行った。まず1次元領域の問題において厳密解と数値解の比較を行い、両者がほぼ完全に一致することを確かめた。また、アンテナ電流密度の大きさやプラズマ密度に依存するRFシース電圧の大きさ、電力密度を計算した(Myra and Kohno, 26th IAEA Fusion Energy Conf.)。そして、本研究で構築した数値計算スキームを用いて得られる結果を従来のスキームによる計算結果と比較するために、2次元スラブ領域内におけるシース・プラズマ相互作用の解析を行った。重要な結果の1つとして、ある条件において、従来の容量性シースモデルを用いて得られたシースに沿う波動の共鳴現象が、(より高精度な)一般化シースモデルを用いた場合には生じないことが確かめられた。これらの研究成果をまとめた論文を執筆し、Computer Physics Communicationsに投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、本研究課題の基盤となる解析コードを初年度に開発したことは大きな成功といえる。その意味では、研究は順調に進展しているといえるだろう。しかし、現段階においては、「背景磁場の磁力線が壁面に対して垂直に交わる場合」のみに適用が限られている。この条件下では、シース境界条件に含まれる複素シースインピーダンスを2つの無次元数に依存する関数として表すことができる。一般的に、背景磁場が任意の角度で壁面と交わる場合は、複素シースインピーダンスを4つの無次元数に依存する関数として表す必要があり(Myra, et al., Phys. Plasmas 22, 062507 (2015))、まずはその定式化が重要な課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
磁力線が任意の角度で壁面と交わる場合に生じるシースを計算しうるスキームが完成した後は、過去の研究において容量性シースモデルを用いて得られた結果との比較を行う。特に、磁力線と壁面の接触角が壁面に沿って変化し、そしてある点においてその接触角が零になる場合には、その点近傍においてシース・プラズマ波の振幅が非常に大きくなることが確かめられた(Kohno, et al., Phys. Plasmas 20, 082514 (2013))。一般化シースモデルを用いた場合においても同様の結果が得られるか否か、確かめる必要がある。その研究が終了した後は、任意の3次元領域に適用しうるコードの開発を進めていきたい。3次元計算では、波数の一成分を指定する必要がないため、RFシース電圧の値等において実験結果との比較が容易になると考えられる。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は理論の構築およびコードの作成が中心であったこと、また、参加したワークショップと研究会の旅費は核融合科学研究所から支給されたため、科研費からの支出は僅か8500円に抑えられたことが主な理由である。さらに、申請時の応募書類の「研究計画・方法」で記載したように、大規模計算には、米国の研究者との協力体制の下で、米国エネルギー研究科学計算センター(NERSC)のスーパーコンピュータを使用できることも支出を抑えることができた大きな要因である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の物品の購入、および学会やワークショップへの参加を計画している。 (1)数値計算用ワークステーション、(2)2017 RF Heating Technology and RF Physics Workshops(Santa Monica)、(3)日本物理学会年次大会(東京理科大学)
|
Research Products
(5 results)