2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18656
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山田 晃嗣 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部(連携), 特任助教 (40587672)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖トランスポーター / リン酸化 / 植物免疫 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
病原体は宿主から栄養を吸収することで増殖する。しかしその一方で、病原体の栄養吸収に対する植物側の防御策の存在は不明であった。われわれは、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、免疫応答が活性化した際に、単糖(グルコース・フルクトース)の吸収活性が増加することを見出した。このことは病原体が感染した際に、植物は積極的に細胞外の糖を吸収していることを示唆している。シロイヌナズナの糖吸収には、糖トランスポーターSTP1およびSTP13が関与していることをわれわれは以前に報告しており、遺伝学的解析より免疫応答依存的な糖吸収活性の増加はSTP13依存的であることが観察された。また、stp1 stp13二重遺伝子破壊株は病原細菌への抵抗性が低下していたことより、それらの糖トランスポーターを介した糖吸収は細菌抵抗性に寄与していることが示された。さらに、STP13が病原体認識受容体FLS2およびその共受容体BAK1と相互作用し、485番目のスレオニン残基がリン酸化されることを見出した。次に、STP13の活性におけるリン酸化の影響を調べるために、485番目のスレオニン残基を疑似リン酸化残基であるアスパラギン酸残基に置換したSTP13を単糖輸送能を欠失した酵母株に導入し、単糖吸収活性を測定した。その結果、糖吸収活性の増加が検出されたことより、リン酸化によりSTP13の糖吸収活性が増加することが示唆された。また、485番目のスレオニン残基を非リン酸化残基であるアラニン残基に置換したSTP13は、野生型STP13と異なり、stp1 stp13の細菌抵抗性の低下を相補できなかった。以上の結果より、植物は細菌感染時にリン酸化を介してSTP13を活性化し、細胞外の糖含量を低下させることで細菌の糖摂取を阻害していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナを用いて免疫活性化時の植物の新規生理応答として糖吸収の増加を見出し、さらに糖トランスポーターSTP13依存性を明らかにしている。本結果より、これまで解析されていなかった栄養吸収と免疫応答との関係性が示唆された。さらに、その分子基盤としてSTP13のリン酸化修飾と細菌抵抗性における重要性も明らかにしている。本研究課題は細胞外の糖含量をコントロールして病原体の糖摂取を阻害する植物の新しい免疫応答を実証するものであり、すでにその一面は解明されているため、本研究は計画よりも進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、糖トランスポーターSTP13の免疫応答時における制御および細菌抵抗性に関する重要性を明らかにしている。しかし、細菌抵抗性の低下はstp1 stp13二重遺伝子破壊株のみにおいて観察されており、STP13遺伝子のみを欠失した際には見られない。そのため、STP13とともにSTP1を介した糖吸収も細菌抵抗性に重要であることが考えられる。今後はSTP1の解析を進めるとともに、他の糖トランスポーターの解析にも着手することで免疫戦略としての糖輸送制御機構の全体像に迫る。
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Causes of Carryover |
機関の移動があり、使用計画に多少の修正が必要だったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額と合わせて、分子生物学試薬などの購入に用いる。
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Research Products
(9 results)