2016 Fiscal Year Research-status Report
窒素の有機化・無機化をコントロールする微生物学的要因の解明
Project/Area Number |
16K18663
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 義崇 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70705251)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 窒素有機化 / 窒素無機化 / 土壌微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究では、土が持つ「作物を育てる力」である「地力」という定義を見直し、特に、微生物学的視点から考察することを目指している。土壌微生物が作物の生育に及ぼす影響は様々だが、ここでは、窒素に着目した実験を行う。まず、今年度は土に稲わらをすき込んだ際、短期的(数日以内に)に増減する微生物を調査する実験を行った。土壌微生物を調べる実験は、今までは、なるべくかく乱が起こっていない時期に行うのが常であったが、私たちは、稲わらなどがすきこまれた際に増えてくる、もしくは減る微生物こそが、本研究には重要であると考えた。具体的には、今年度の実験で、畑地土壌に稲わらをすき込むと、Acidobacteria、Gemmatimonadetes、Proteobacteria門が増えることがわかった。また、その際に、当初土に多く存在していた硝酸態の窒素が、数日以内に枯渇することがわかった。私たちはこれを、窒素の有機化が起こったためだと考えているが、脱窒や、硝化など、窒素循環に関わる他のプロセスについても考察する必要がある。さらに、これら増えてくる微生物の割合が、土壌タイプによって異なる可能性があることも予備的ではあるが示唆された。そのため、たとえば作物と土壌の組み合わせによって、炭素がすき込まれた際に増減する微生物が変わるのか、などの考察を今後は深くおこなっていく。この成果を世界窒素会議(2016年12月、メルボルン、オーストラリア)等で発表し、論文も現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までは、主に、16S rRNAという、バクテリアを一般的に解析する手法を用いて、微生物を評価してきた。このことで、土に炭素(稲わら)が加わった際に、どういった微生物が増減するのか、またその増減と、窒素循環にどのような変化が起こるのか、ということがわかりつつある。さらに、予備的ではあるが、16S rRNA以外の遺伝子、たとえば、窒素固定に関わるnif遺伝子や、脱窒に関わるnos遺伝子に関しても、土壌中から抽出した遺伝子を用いて増幅することが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この稲わらをすき込むと増えてくる微生物と、窒素の有機化・無機化との関連性について掘り下げていく。なぜなら、無機態の窒素は植物にとって利用されやすい(アンモニア、硝酸など)が、有機態となった窒素、つまり、微生物によって食べられた窒素は、植物にとっては利用しにくい形だからである。しかし一方で、有機態の窒素は、土に蓄えられ、その微生物が死ぬことでまた無機態窒素として、植物へ提供される可能性がある。そのため、環境負荷や農場生産面で非常に重要な栄養素である窒素をより効率よく使うためには、ベストな添加炭素源(稲わらなど)と土壌の組み合わせを提言することが必要となってくるであろう。このような視点から、より多くの土壌タイプ、炭素源を利用した類似の実験を行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)