2017 Fiscal Year Research-status Report
食肉目の希少動物における偽妊娠の生理生態的意義の解明と妊娠判定法の確立
Project/Area Number |
16K18782
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
楠田 哲士 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20507628)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ネコ科 / 糞中ホルモン / エストロジェン / チーター / 動物園 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネコ科およびクマ科の複数種において,動物園飼育個体から糞を定期的に採取し,糞中の性ステロイドホルモンを測定して発情や排卵の状況を前年度に引き続き継続調査し,さらに妊娠と偽妊娠の内分泌動態の比較を行った。また,これらの調査と共に,行動の観察および解析を行った。このうち特にチーターにおいて,まとまった結果が得られたので概説する。 チーターの繁殖生理や行動に関する研究はそれぞれにいくつか行われてきたが,交尾前後の行動変化と性ホルモン動態の関連性を調査した例や育子行動に関する研究例は非常に限られており,不明な点が多くある。本種の発情兆候は個体により不明瞭なものも多く,ネコ科動物の中では発情の発見が難しい種である。今回,チーターの発情および交尾(妊娠出産に成功)に伴う内分泌動態と行動変化を詳細に把握することができた。しかし,偽妊娠の場合の行動変化については観察が実施できなかった。行動観察は展示場への放飼後2時間とし,活動時間,発声,ローリング,陰部舐め,爪とぎ,グルーミング,体の擦りつけ,匂い嗅ぎおよびマーキングの9項目を連続記録法により目視観察した。行動観察記録と糞中エストロジェン動態を比較した結果,体の擦りつけ,匂い嗅ぎおよびマーキングの3項目の合計数の変化と糞中エストロジェン含量の増減がほぼ一致した。交尾日にはローリング回数が増加したが,そのほとんどは交尾直後に観察された。各行動は交尾前と交尾後で多く観察され,同様に糞中エストロジェンの上昇も認められたが,交尾後にはマーキング回数が顕著に減少した。すなわち,体の擦りつけ,匂い嗅ぎ,マーキングの少なくともこれら3項目は発情の指標となると考えられた。また,糞中プロジェステロンおよびプロスタグランジンF2α代謝物の測定から妊娠判定にも成功し,無事出産に至った。これにより,その後の育子行動の定量解析も次年度に向けて着手している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネコ科およびクマ科の複数種において,妊娠と偽妊娠の糞中ホルモン動態を調査し,それらの違いを種間で比較することができた。特にチーターにおいては,まとまった結果が得られ,妊娠の場合の行動変化を明らかにすることができた。動物園の現場において,繁殖計画や妊娠判定等の実践にも,これらの分析結果を生かすことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
妊娠・偽妊娠のそれぞれの生理物質の体内動態と行動パターンの違いを,引き続き残った種で明らかにし,動物群間で比較するとともに,偽妊娠の生理的または生態的な意義を考察していく。また,動物園での実際の繁殖の際に,リアルタイムでの発情判定や妊娠診断を試みることで,本手法の実践利用の有用性確認や問題点を洗い出す。基本的には,当初の計画通りに研究を進め,得られた成果を順次学会等において発表していく。
|
Research Products
(8 results)