2016 Fiscal Year Research-status Report
腸管感染細菌が惹起する劇症型感染症の発症機構と分子疫学解析
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16K18926
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
小林 秀丈 広島国際大学, 薬学部, 講師 (70441574)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微生物・感染症学 / 細菌性食中毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aeromonasは食中毒の原因菌として単離されるが、しばしば重症化し敗血症、膿瘍や壊死性筋膜炎を伴った四肢の壊死などを引き起こすことが報告されている。そのことから,これらの菌は「ヒト食いバクテリア」としても警戒されている.本菌による重症化症状は急速に病状が進行することから劇症型Aeromonas感染症とも呼ばれ感染症が起こった場合には速やかに治療を行う必要がある。このような劇症型Aeromonas感染症の発症には菌が初感染病巣である腸管から組織へと浸潤することにより引き起こされると考えられる。これまでに報告者らはAeromonas sobriaの菌体外セリンプロテアーゼ(ASP)が上皮バリア破壊を引き起こす作用があることを明らかにし、さらにASPはVibrio属細菌など組織浸潤を起こす細菌で広く保存されていることを報告した。それゆえ、菌の組織浸潤にASPが関わると推察される。ASPのバリア破壊機構を明らかにし、ASPの感染での役割を明らかにできれば、組織浸潤による劇症型の発症機構の解明が進む。さらに、これらの知見をもとに AeromonasやVibrioなどで劇症型感染症を起こす菌株でのASP遺伝子の分子疫学調査を行い、高病原細菌の迅速な検出法を開発する。 研究期間内には次の研究項目を実施する予定である。Ⅰ. ASPのバリア破壊における分子機構の解明 Ⅱ. 腸管感染細菌のasp遺伝子の保有状況や遺伝子型の調査 本研究によりASPの標的分子が明らかになれば、ASPを標的とした劇症型感染症の治療薬の開発や、高病原細菌の迅速な検出による食中毒の予防などにも貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASPのバリア破壊における分子機構の解明を目指し、細胞間接着分子の中からASPの標的となる分子の同定を行った。精製ASPを作用させた腸管上皮細胞より、細胞抽出物を調整し、細胞間接着分子の抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った。その結果、ASPはoccludin、nectin 2、ZO-1およびaffadinなどでASP処理濃度依存的にバンドの消失が観察された。次に、同様の抗体を用いた細胞免疫染色ではASPを処理した細胞において蛍光強度の減弱が観察された。これらの結果から、ASPはoccludin、nectin 2、ZO-1およびaffadinなどに影響を及ぼすことが明らかになった。 次に、ASPの標的分子であることが明らかになったnectin 2について切断部位の特定を試みた。組み換えnectin 2タンパク質にASPを処理してSDS電気泳動を行った結果、ASP濃度依存的にnectin 2タンパク質の分解が観察され、さらに分解断片が検出された。この分解断片についてN末端アミノ酸配列を決定し、ASPによる切断配列を特定した結果、ASPはnectin 2の細胞外ドメインを切断していることが明らかになった。これらの結果から、ASPはnectin 2の細胞外ドメインの切断を行うことで、上皮バリア破壊を引き起こすことが推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
組織浸潤能とASPとの関係をより多くの菌株で解析する目的で、VibrioやAeomonas属細菌の臨床分離株を用い組織浸潤能とASP産生能について解析する。トランスウェルに培養した腸管上皮細胞の管腔側へ菌を接種し,基底膜側へ透過した菌数を測定する。基底膜側に浸潤する菌数が多い組織浸潤性が高い菌株を特定する。さらに、これらの菌株のASP産生能について、ASPが特異的に切断し蛍光は発する基質を用いて解析する。さらにasp遺伝子を特異的に増幅できるプライマーを使用し、遺伝子の保有状況を確認する。これらの解析により、菌のASP産生能と組織浸潤能との関係について明らかにできるものと考える。 次に、各種菌株の遺伝子型を決定し、組織浸潤能を有する遺伝子型を同定する。菌の染色体遺伝子を制限酵素(XbaI)で切断し、パルスフィールドゲル電気泳動法で切断断片の分離を行う。得られた電気泳動のパターンにより遺伝子型を特定する。組織浸潤能の高い菌株と低い菌株での遺伝子型の違いを比較し、それぞれに特徴的な遺伝子型を特定する。将来的に本研究による成果が高病原性細菌の検査方法の確立や、感染症予防のための必要な情報の提供につながるものと期待している。
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Causes of Carryover |
論文掲載費として予定していたが、現在投稿中であり掲載は次年度になりそうであるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文掲載費 46,369円
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Research Products
(4 results)