2016 Fiscal Year Research-status Report
生体機能を有したヒトiPS細胞由来血液脳関門モデルの構築
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16K19033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山水 康平 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (00589434)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / 脳血管内皮細胞 / iPS細胞 / 薬物動態 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
脳を健康な状態に保つためには神経細胞を有害物質から守ることが重要であり、そのバリアーとして役割を果たすのが血液脳関門(Blood-Brain-Barrier; BBB)である。BBBは血管内皮細胞と、その周りをペリサイトや神経細胞、アストロサイトなどが取り囲むことで構成され、強固なタイトジャンクションを形成すると共に特異的なトランスポーターを発現し、物質の移送を厳密に制御することにより脳の恒常性を維持している。このバリアー機能は時として障害となりえる。すなわち、脳内への薬物の輸送を阻害する。 これまでに我々は、ヒトiPS細胞より血管内皮細胞、ペリサイト、神経細胞、アストロサイトへの効率的な分化誘導法を確立した。iPS細胞より血管内皮細胞、ペリサイトの分化誘導はほぼ100%の確立で誘導することに成功している。本研究では、BBB形成に必要な血管内皮細胞、ペリサイト、神経細胞、アストロサイトを共培養することにより脳血管内皮細胞を誘導することを試みている。脳血管内皮細胞はqPCR, 免疫染色等で解析している。さらに、iPS細胞より誘導した脳血管内皮細胞をトランスウェルの上部側、アストロサイトから誘導されるサイトカインが脳血管内皮細胞を成熟させることが報告されているため、 iPS細胞より誘導したアストロサイトをトランスウェルの底面に接着させ共培養することにより、BBBモデルを作製する可能性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の目標であった二次元血液脳関門モデルを構築することを試みている段階である。iPS細胞由来血管内皮細胞、ペリサイト、神経細胞、アストロサイトの共培養で脳血管内皮細胞の誘導を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体の血管内皮細胞は血流によるシェアストレスが常に作用している。血管内皮細胞はシェアストレスの変化を認識して、その形態や機能、また遺伝子発現の変化を伴う細胞応答を起こす性質がある。これまでに、不死化した脳血管内皮細胞を用いて、培養液の還流によるシェアストレスによりBBBの機能的指標である経内皮電気抵抗が3~20倍増加することが報告されている。また、ラット成体のBBBにおける経内皮電気抵抗はin vitroにおけるラット由来の脳血管内皮細胞を用いた二次元BBBモデルと比較し、10~100倍高値を示すことが知られ、同様に我々の二次元ヒトBBBモデルはラット成体の10分の1程度の値を示す。このことからBBBの成熟化には、還流によるシェアストレスが必要であると考え、還流可能なiPS細胞由来の三次元BBBモデルの構築を行う。 さらに、脳血管内皮細胞の微細環境では、アストロサイトがend-footを伸ばし、脳血管内皮細胞を包囲することで、BBBの成熟化を促している。今までの研究で、アストロサイトの発生とBBBの成熟化の時期が相関していることが示されており、器質的・機能的にも両者が密接に相互作用していることが報告されている。そのため、BBBの微細環境を整えることにより、二次元培養では構築が不可能な、管腔構造を伴った三次元構造を形成することは、BBB成熟化及びより生体内環境を模倣した薬物透過性試験を行う上で重要である。 これらの理由から、平成29年度の目標である三次元血液脳関門モデルの作製にすでに取り組んでいる。
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