2018 Fiscal Year Research-status Report
ロシア帝国内のチベット仏教徒と南・東南アジアの民族知識人に関する研究
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16K20880
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
井上 岳彦 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (60723202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ロシア帝国 / 仏教 / カルムィク人 / ブリヤート人 / 東南アジア / 南アジア / 東洋学 / 交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、以下のように調査・研究、研究成果の発表、研究者との意見交換を行なった。 昨年度に引き続き、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのロシア・アジア学講座を拠点に、本課題に関する共同研究を10月まで行なった。ミュンヘンでは大学図書館やバイエルン州立図書館で貴重な文献の数々を閲覧・複写し、研究を進めた。また医療、表象文化、思想をめぐるロシア・アジア交流史についてのセミナー授業に参加し、西欧やロシアの研究者と意見交換を行ない、本研究課題の意義を再確認した。ベルリンの東欧国際研究センター(ZOiS)に呼ばれ、同センターやマックス・プランク社会人類学研究所のカルムィク・ブリヤート研究者と様々な意見を交換し、本研究について有益な情報を得ることができた。 6月にモンゴルとブリヤートを訪ね、現地研究者から調査について有効な助言を得た。9月にイギリス国立公文書館、大英図書館、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)を訪ね、ロシア国内のチベット仏教徒と英領植民地および影響地域の現地知識人に関連して、イギリス政府の動向について調査を行なった。さらに12月にロシア・モスクワを訪ね、ロシアと南・東南アジアの関係について調査を行なった。 以上の研究から、I.I.ミナエフらロシアのインド学・仏教学研究者の存在が非常に重要であることが判明し、ロシア・イギリス両政府、カルムィク人・ブリヤート人仏教徒、さらに南アジア・東南アジア諸地域の動向と相互作用について、ミナエフらのインド旅行を注視しつつ包括的に解明する必要性を見出した。今後いっそう、南アジア・東南アジアとの相互関係について現地史料の探索を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度では、ロシア帝国の仏教学・インド学研究者と英領インドの関係を調査し、I.I.ミナエフらの動向を明らかにすることができたという点においては進展があったが、モスクワのロシア帝国外交史料館(AVPRI)、サンクトペテルブルグのロシア国立海軍公文書館(RGAVMF)やモスクワのロシア国立軍事史公文書館(RGVIA)といった公文書館での史料収集が上手くいかず、旅行者についてすでに公刊されている史料集、日記、紀行などの内容を大きく更新するような新たな史料を発見することができなかった。またビザ問題などロシア現地調査の状況変化、異動による自身の研究環境の変化やエフォート配分の変化に対して十分に対応することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、引き続き公刊史料や現地で収集した同時代資料の分析を進め、モスクワのロシア外交史料館(AVPRI)での調査に注力し、新たな史料の探索に重点を置く。そのため複数回のロシア渡航によって、新史料の収集・読解を行なう予定である。 またこれまでの研究成果として、6月に中央アジア研究ヨーロッパ学会(ESCAS)第16回大会でパネル発表やラウンドテーブル発表、7月に国際チベット研究学会(IATS)第15回大会でパネル発表、9月にモスクワの国立研究大学高等経済学院主催のワークショップで口頭発表を行う予定である。 以上のように、令和元年度の研究計画としては、モスクワでの史料探索を進めるとともに、研究成果について複数の研究領域の学会で発表することで、多くの研究者と意見交換を行ない、様々な視点からの助言に基づき研究の仕上げを行なう予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、10月まで在外研究を行なっていたことや、自身の異動によって研究環境が変化したこと、公刊史料や購入済研究資料の読解・分析に注力したこと等の理由で、「物品費」としての使用がなかった。また、ロシアでの研究調査期間が短くなったために、「旅費」にも余りが生じた。 本年度は、複数回のロシア調査を行い、研究成果の発表のために国外の学会に参加する予定である。これらの調査・研究発表のために「旅費」を充てる。また研究用書籍を購入するために「物品費」を充てる。その他、外国語校正のための費用として使用するつもりである。
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Research Products
(6 results)