2017 Fiscal Year Research-status Report
大規模臨床看護データと機械学習による重症を伴う転倒発生の予測手法開発に関する研究
Project/Area Number |
16K20977
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横田 慎一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90599490)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転倒・転落 / 医療安全 / 患者安全 / データ二次利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者転倒リスク判別ロジックは、現場にとって本当に有用なのかどうかについて、電子カルテに実装した患者転倒リスク判別ツールの使用状況や患者データを使って検証を行った。患者毎の繰り返しレコードや病棟・診療科の入れ子構造における分析に適した、マルチレベルロジスティック回帰分析を採用し、調整変数に、患者の基本属性(年齢・性別)、病棟、診療科、看護必要度項目、等の、電子カルテ蓄積データを使用して分析を行った。 その結果、ツールの電子カルテ実装前 対 実装後 の転倒発生確率(287,272人日 対 285,843人日)は、オッズ比0.83(95% CI: 0.72-0.95)となり、転倒発生確率は統計的有意に低下した。また実装後期間におけるツール非使用患者 対 使用患者 の転倒発生確率(142,252人日 対 143,691人日)は、オッズ比1.12 (95% CI: 0.91-1.37)となり、転倒発生確率は不変であった。 導入後期間で転倒発生件数が減ったのはツールによる結果である可能性があるが、使用した後の状態の患者でも使用していない状態の患者でも転倒しやすさに差があると言えない事から、ツールによる効果ではなく「データに出てきていない現場の意識の変化や他の対策」のおかげである可能性があると考える。 「データに出てきていない現場の意識の変化や他の対策」を拾えるようにするためには、行為の標準化と記録の標準化による可視化を進める事とデータ解析のために結果値のバリエーションを可能な限り集める事が必要と考える。 また本研究の成果の一部を、一般向けの書籍として分担執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重症を伴う転倒発生を予測するための有効な手法の開発自体に困難さが存在すると考えられ、今年度は予測手法が本当に有用なのかどうかについて検証を行った。元々の研究課題からすればやや傍流へと入った形ではあるが、研究結果がJournal of Nursing Care Quality. に原著論文として掲載され、ひとつの知見を創出することに成功したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現行のデータソースからの重症を伴う転倒発生を予測する手法の開発自体に引き続き若干の困難さが存在すると考えている。よって最終年度は、患者転倒・転落という事象を俯瞰的に捉える事に主眼をおいた研究を進める。すなわち、日本語で表現するところの転倒と転落は、臨床現場においてそもそもどのように区別されているのかを、インシデントレポート(転倒報告書)の自由記載文を分析することで明らかにする。臨床現場における区別・記述を分析することで、既存のデータソースに不足している情報は何かを明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)一部学会参加を見合わせた事により差額が生じた。来年度もより適正な使用を心がけるようにしたい。 (使用計画)国際学会2件への参加に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)