2019 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒の長所・資源に着目した生徒指導モデルの構築
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16K21021
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (80712075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ほめる・認める生徒指導 / 小学校 / 包摂 / 機会の平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導のモデルを構築し、その可能性と限界に関して検討を行うことにある。そうした目標の達成に向けて、2019年度は、2018年度に実施した児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導の理念と運用に関する、小学校教員・元教員16名へのインタビュー調査のデータ分析を行った。具体的に分析を行ったテーマは、以下の2点である。 1点目は、小学校教員が「ほめる・認める生徒指導」を行う理由の分析である。「ほめる・認める生徒指導」とは、教師が、自ら子どもたちの「よいところ」をほめる・認めることや、子ども同士がお互いをほめ合う・認め合う空間をコーディネートすることによって、子どもたちの成長・発達を促そうとする生徒指導の実践のことを指す。インタビュー調査の分析からは、教師たちが【子どもたちが望ましい行動をとるようになる】【子どもたちに学校生活に前向きに取り組めるような気持ちが備わる】【子どもたちがお互いを受容できるようになる】という3つの変容を予期して、「ほめる・認める生徒指導」を行っている様子が見出せた。これらの知見をもとに、ほめる・認める生徒指導ではすべての子どもを包摂する学級風土・学校風土の構築が目指されていることを指摘した。成果については2019年6月の日本子ども社会学会第26回大会で発表を行い、『日本教育大学協会研究年報』第38集に論文が掲載された。 2点目は、小学校教員が「ほめる・認める生徒指導」の機会を子どもたちに分配する方針の分析である。分析からは、教師たちのほめる・認める機会の分配方針は「実質的平等」としての機会の平等に沿うものであり、そうした理念が子どもたちに学校生活・社会生活の中での規範として伝達される可能性が示唆された。成果については、2019年9月の日本教育社会学会第71回大会で発表を行い、現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導について、文献調査やインタビュー調査からその現状をしっかり把握し、可能性と限界について検討を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査、インタビュー調査は完了しているため、2020年度は分析と成果発表に注力する。分析については、今後、小学校教員が「ほめる・認める生徒指導」の際にどのようなことをほめたり認めたりしているのか、それを通して子どもたちをどのような個人へと育てようとしているのかについて検討を行っていく予定である。また、成果発表としては、2本の論文の執筆を行うとともに、世界的な新型コロナウイルスの感染が収束すれば、今までの成果の総括として、日本流のほめる・認める生徒指導のモデルの構築について2021年1月の国際会議(The 19th Annual Hawaii International Conference on Education)にて発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度に研究成果を参加・発表予定だった国際学会が、校務(学位記授与式)と重なっていて参加できなかった。そのため、2020年度の国際学会で発表する予定の海外旅費と、その発表内容のブラッシュアップに向けて必要になる先行研究の書籍購入費、文献複写費のために、補助事業期間の延長を申請した。2020年度の主な出費としては、国際学会への旅費(2021年1月・ハワイ)、書籍購入費、文献複写費、データ処理に係る謝金等を計画している
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Research Products
(3 results)