2017 Fiscal Year Research-status Report
量子系における動的推定器の性能解析と近似理論の構成
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16K21127
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木 健太郎 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40639233)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移動エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,近似精度として移動エントロピーの考え方を取り入れた.移動エントロピーは時系列間の情報の移動を定量化したものであるが,時系列データのみを用いても計算できるため,ネットワーク関係を調べる社会実験や遺伝子ネットワークの解明などに広く用いられている.本年は,この移動エントロピーが条件付き Kullback--Leibler 情報量の一種であることを示した.Kullback Leibler 情報量そのものは,量子情報理論へ拡張しやすい量であり,研究開始当初に考えていた最小二乗誤差と相互情報量の関係の量子版を導出するよりも単純に量子系へ拡張することが期待できる. また時系列データを用いる手法では,調べるべき確率変数の数が多くなるにつれてデータ数が非常に多く必要になることを示しモデルベースの利用法を提案してその優位性を数値例で示した.その応用法として,ネットワーク同定の精度についても議論した. 申請時に考慮していた最小二乗法と情報理論の考え方は,最小二乗誤差と相互情報量の関係を表したものであるが,移動エントロピーは時系列に対する条件付き Kullback--Leibler 情報量の一種であり,あるデータを知っている場合と知らない場合の情報量の差を表すものである.したがって,この移動エントロピーの差を小さくするように低次元化を行えば,情報量の意味で最も損失のない低次元推定器が構成可能になる. これ以外にも,Poisson 過程をもつ観測をする場合が量子系ではあるため,そのための量子スムーザーも導出した.Wiener 過程とPoisson 過程を両方カバーしたことで,Levy 過程などの幅広い確率過程の推定器も構成することができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
無限次元の作用素環の解析が難航しており,古典確率論と量子確率論の間にあるギャップが埋められていない.量子系の推定器は無限次元の古典確率系で記述されるが,実現される空間がユニタリ作用素によって時々刻々と変化していく.したがって,古典確率系とはいえども作用素の解析が必要になる.このために近似指標の構成が遅れているためが,別の尺度を採用したことにより,改善することが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
移動エントロピーを量子系へ拡張する.移動エントロピーを条件付きのKullback-Leibler 情報量と関連付けられたことで,種々の量子 Kullback-Leibler 情報量を用いた解析が可能になる.そこで,この指標に基づいた近似手法を構築する方面ですすめる.量子 Kullback-Leibler 情報量は,古典版の自然な拡張としても複数の定義が存在するため,それぞれに対して近似フィルタとその誤差を評価する.
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Causes of Carryover |
論文採録がなく掲載料が不要であったため.次年度は英文校正と論文掲載料,および計算機に充てる予定.
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Research Products
(3 results)