2016 Fiscal Year Research-status Report
オーダーN遮蔽KKRグリーン関数法による局所エネルギー解析
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16K21155
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福島 鉄也 大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 特任准教授(常勤) (00506892)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マテリアルデザイン / 第一原理計算 / KKRグリーン関数法 / 大規模電子状態計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の試行錯誤的なトライアル・アンド・エラーによる新機能材料探索が限界に近づいてきているなか、プロセスを大幅に短縮可能な新物質探索手法の開発、第一原理計算・デザイン主導による新物質開発が社会的急務となっている。 従来の第一原理電子状態計算手法では計算コストの面からナノ・サブミクロンスケールの対象を取り扱うことが不可能であるため、マテリアルデザインやデバイスデザインをナノ超構造物質に対してより正確に行うには大規模系(数千から数百万原子)を高精度かつ高速度に扱える計算手法(オーダーN法:計算コストが原子数Nの1乗で増加する)の確立が必要不可欠である。また現実のデバイス構造を考えると単純な周期系からはほど遠く、不純物欠陥・転移・結晶粒界相等の不規則性を考慮する必要がある。 平成28年度において我々はオーダーN法の一つであるFull-potential All-electron Screened Korringa-Kohn-Rostoker Green's function(遮蔽KKRグリーン関数)法に基づいた配置・構造不規則性を含む大規模系を統合的に取り扱えるアプリケーションツール(KKRnano)を開発した。 このツールを用いることで、ナノ超構造体の局所構造・局所エネルギーの安定性、電子構造、磁気状態を効率よく調べることが可能になる。既に新機能物質である強磁性相変化物質や強磁性高エントロピー合金のマテリアルデザインに成功している。KKRnanoはドイツ・ユーリッヒ研究所所属のBlue Gene/Q (JUQEEN)上で最適化されており、数十万原子の大規模系に対して適用可能であることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通りドイツ・ユーリッヒ研究所との密な共同研究体制を整えることに成功した。実際に5月17日~7月8日、9月19~9月30日、12月12日~12月17日の3回に渡りユーリッヒ研究所に滞在しPeter Dederich教授、Stefan Bluegel教授、Rudolf Zeller博士らと共同研究を行なった。 共同研究を通じ、KKRnanoプログラムパッケージの開発・拡張も順調に進んでいる。KKRグリーン関数法に基づいた構造緩和、局所エネルギー解析、スピン・軌道相互作用やノンコリニア磁性、磁気相互作用(交換相互作用とジャロシンスキー・守谷相互作用)等の計算が可能になった。 また擬似的最小残差法、ブロック巡回行列の前処理、グリーン関数に対する実空間における局所相互作用領域等を利用することで、KKRnanoプログラムパッケージの高速・高精度化を達成した。 実際に開発したKKRnanoプログラムパッケージを高エントロピー合金であるAlCrFeCoNiとCrFeCoNiに適用し局所エネルギー解析を行うことにより、その電子状態、磁気特性を解明し、また局所構造の安定性からFCC-BCC相転移のメカニズムを明らかにした。これらの結果は学術論文雑誌としてを投稿されている。 また計算物質科学人材育成コンソーシアム・滞在型共同研究事業を利用して、新たに東京大学物性研究所の尾崎泰助特任教授との共同研究を立ち上げた。その中で、密度汎関数理論における全エネルギーの軌道・サイト分解法と磁気的交換相互作用の高精度計算法を新たに提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に従い、当初の計画通り平成29年度は開発したアプリケーションツールとユーリッヒ研究所所属のスーパーコンピューター「Blue Gene/Q」や理化学研究所所属の「京」を利用し、以下に述べる配置・構造不規則性や結晶粒界を含むナノ超構造体に対して計算機マテリアルデザインを応用する:(i)「スピノーダル・ナノ分解によって形成された自己組織化ナノ超構造を利用した高効率太陽電池材料のデザインと実証」、(ii)「酸化物や永久磁石の粒界によって誘起される磁気物性の理論的解析」、(iii)「抵抗変化型メモリにおける動作原理の解明」。 計算結果が整い次第、実験者によるデザインの実証を要請する。実験者からの意見、フィードバックを取り入れつつ計算機マテリアルデザインを実行する。研究を遂行する上でトラブルやデザインの方向性に問題が生じた時は、平成28年度に新たに締結した2国間交流事業(スウェーデン・ウプサラ大学とオーストリア・ヨハネスケプラー大学)を通じて、他研究グループと意見を交換することで対処する。 平成29年度は時間が許す限りミーティング、ワークショップ、国内・国際会議に出席し他研究者とコンタクトを取る。また、本研究課題で開発するKKRnanoプログラムと局所エネルギー手解析手法は他のナノエレクトロニクス材料のマテリアルデザインにも適用可能なので、コンピュテーショナル・マテリアルズ・デザイン(CMD)ワークショップを利用しプログラムの公開も平行して行う。
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Research Products
(12 results)