2016 Fiscal Year Research-status Report
SGA性低身長を呈するミトコンドリア呼吸鎖異常症での脂肪酸輸送体FATP3の役割
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16K21331
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
徳澤 佳美 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (20406531)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミトコンドリア病 / ヒトiPS細胞 / エネルギー代謝 / 胎内発育不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア病は呼吸鎖複合体の酵素活性の低下によって引き起こされる先天性代謝異常症である。Small-for-gestational age (SGA)性低身長症の男児がミトコンドリア病と診断されたため、病因遺伝子を明らかにするために全エクソーム解析を行った。その結果、Fatty acid transport protein 3 (FATP3)遺伝子にミスセンス変異が存在することがわかった。FATP3はミトコンドリアに局在する脂肪酸輸送体であることが知られている。本研究課題では、FATP3がどのようにミトコンドリア呼吸鎖複合体に影響を及ぼすのか理解するため、分子レベル、細胞レベルでFATP3の生理的役割を明らかにすることを目的としている。 当初は株化細胞にてFATP3過剰発現細胞とFATP3ノックアウト細胞を作製し、二次元電気泳動による呼吸鎖複合体の解析を実施する予定であった。しかし、株化細胞では胎内発育不全を引き起こすメカニズム解明に直接アプローチすることはできない。また、研究代表者は平成28年度より、ヒトiPS細胞を対象に研究できる環境に異動したことから、株化細胞ではなくヒトiPS細胞でFATP3ノックアウト細胞を作製し、解析することにした。ヒトiPS細胞は未分化状態ではミトコンドリア活性が抑制されており、分化誘導に伴い代謝が電子伝達系-酸化的リン酸化にスイッチすることが知られている。この点からも、FATP3ノックアウトiPS細胞を樹立する際に、FATP3の発現抑制による細胞への影響を最大限に抑えることができると考えた。実際に使用するヒトiPS細胞でミトコンドリア活性が低下しているか調べるために、膜電位依存性の蛍光色素で染色し、ミトコンドリアの活性が低下していることを確認した。また、ゲノム編集による遺伝子改変やタンパク質発現実験、細胞培養系などの研究環境整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年4月に愛媛大学に異動したため、今までの実験系を始めから構築する必要があった。また研究環境の整備や、iPS細胞培養技術の習得に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はFATP3ノックアウトiPS細胞を樹立し、神経外胚葉系や線維芽細胞へ分化誘導して、ミトコンドリア依存的なエネルギー代謝の状態の時に細胞増殖や生存率に与える影響を解析したい。また、イメージング技術を用いてミトコンドリアの形態観察、膜構造を観察したい。分子レベルでの解析は、FATP3ノックアウトiPS細胞からミトコンドリアを単離し、2次元電気泳動法にて、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の挙動を調べる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として67,950円が生じたが、これは実験計画に遅れが生じたため、FATP3ノックアウトiPS細胞作製に使用する試薬の購入が間に合わなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越分は、FATP3ノックアウトiPS細胞作製に使用する酵素、試薬類の購入に当てる予定である。
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