2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21489
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野田 岳仁 立命館大学, 政策科学部, 助教 (20756770)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アクアツーリズム / エコツーリズム / コモンズ / 水文化 / 水資源管理 / 観光まちづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域社会が取り組みはじめたアクアツーリズムの論理とその仕組みを明らかにすることである。アクアツーリズムは次の興味深い特徴を持っている。すなわち、近代観光が前提としてきた観光客の自由や自発性を著しく制限した観光であるにもかかわらず、観光客はそれをむしろ歓迎し、そのことがアクアツーリズムの魅力とさえなっていることである。本年度は初年度でもあり、この特徴を分析の手掛かりとしながら、主要な事例地におけるデータ収集と先行研究における本研究の位置を把握することに重点を置いてきた。暫定的に得られた知見をまとめておこう。 アクアツーリズムは、観光の対象が“水”という自然でもあるため、エコツーリズムと親和性が高いと考えられてきた。しかし、次の点で決定的な違いがある。よく知られているようにエコツーリズムは欧米型の自然観が埋め込まれたツーリズムであるから、人びとの手の入らない自然が望ましく、自然の希少性や生物多様性を評価するモデルをつくってきた。それに対して、アクアツーリズムが対象とするのは、地域社会に現存する湧水や洗い場といった人びとの手が入り続けた自然であり、いまなお現場の人びとの生活に欠かせない“コモンズ”でもある。このような現場の人びとの自然観がアクアツーリズムの魅力の形成にも寄与していることが想定される。というのも、アクアツーリズムに取り組む地域社会は、人びとの生活資源が観光資源化することに強い抵抗を示したり、観光利用によって“コモンズ”が壊れることがないようにさまざまな工夫をしていることが分かってきたからである。一方のアクアツーリズムに参加する観光客にとっても、地域の“コモンズ”であることに価値を見出していた。観光客は、ただ水辺を眺めたり、湧水を味わうことに満足しているわけではなかったからである。次年度からは、アクアツーリズムの論理の内実に迫っていくことになるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度ではあるが、外部からの原稿依頼や国際学会での発表などの要請を受け入れるかたちで研究を暫定的にでもまとめる必要に迫られた。それらの成果は、次年度以降に公表されるものもあるが、これらの機会を生かすことで、研究を当初の計画以上に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、アクアツーリズムに取り組む事例地にて調査を継続し、論文執筆や学会報告を続けていく。すでに選定している事例地が農山漁村地域にやや偏りがあるため、都市部や市街地地域でのアクアツーリズムの事例にも視野を広げながら調査を進めていく必要がある。
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Causes of Carryover |
当初の計画より研究が進展し、次年度の初めに国際学会で発表するための渡航費用を支払う必要が生じたことから、途中で一部前倒し請求をし、その残金が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度もフィールド調査に重点を置くため、その旅費として支出予定である。
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Research Products
(2 results)