2016 Fiscal Year Research-status Report
ネオニコチノイドの毒性発現を制御するニコチン性アセチルコリン受容体の構造因子探索
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16K21507
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
伊原 誠 近畿大学, 農学部, 講師 (30466031)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド / アセチルコリン受容体 / アセチルコリン結合タンパク質 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネオニコチノイドは昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に選択的に作用する.しかし,依然その分子機構について不明な点が多い.そこで,本研究では電気生理学的・構造生物学的アプローチにより,ネオニコチノイドとnAChRとの相互作用を決定づける新奇構造因子の解明を目指した. 研究計画立案時からコンカテマー化した受容体を用いるべく種々コンストラクトを作成を順次進めてきたが,変異体作成を行う際のスループットが低いことから,受容体ストイキオメトリーの制御する手法として,より簡便でスループットの高い,遺伝子導入量の調整による方法に転換した.その結果,研究開始時に重要性について予見した昆虫nAChRサブユニットにおいて共通してみられるアミノ酸残基は,それら単独ではネオニコチノイドの相互作用において限定的な影響しか示さないことが分かった.ところが,ホモロジーモデルから当該アミノ酸との相互作用が予測された昆虫のnAChRで広くみられるアミノ酸残基に着目して,解析をおこなったところ,それらが「同時に存在すること」がネオニコチノイドの相互作用には重要であることが示された. 同時に,X線結晶構造解析による相互作用機構の解析を目的に,nAChRのモデルタンパク質であるアセチルコリン結合タンパク質と新規ネオニコチノイド化合物の共結晶化を試みた.その結果,数種の条件でタンパク質結晶が得られることがわかり,そのいくつかでは2.5-3Å程度の分解能でX線の反射が見られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネオニコチノイドが昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に選択的に作用する分子機構を解明するために,電気生理学的・構造生物学的アプローチをとることで,ネオニコチノイドとnAChRとの相互作用を決定づける新奇構造因子の解明を目指した. 研究開始時において,コンカテマー化した受容体を用いるべく種々コンストラクトを作成していたが,電気生理学実験を行う際に使用する受容体について,その変異体作成時のスループットが悪いことから,受容体ストイキオメトリーの制御する手法として,より簡便でスループットの高い,遺伝子導入量の調整による方法に転換した. その結果,研究開始時に予想した昆虫nAChRサブユイットにおいて共通してみられるアミノ酸配列が重要で,さらにホモロジーモデルにより当該アミノ酸との相互作用が予測されたアミノ酸残基が相まって,ネオニコチノイドの作用に重要であることが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度からの研究を継続する.なお,平成28年度には,スループットを上げるためにコンカテマー化した受容体を使用せずに,遺伝子導入量のコントロールによって発現させる受容体のストイキオメトリーを制御するという手法を選択したが,これまでの研究結果を踏まえて平成29年度は,平成28年度に作成したコンストラクトをコンカテマー化し,それらを用いることで,発現させる受容体のストイキオメトリーの制御を厳密に制御した状態での解析を行いネオニコチノイドとニコチン性アセチルコリン受容体間相互作用についてさらに研究を進める. アセチルコリン結合タンパク質と新奇ネオニコチノイド関連化合物複合体の結晶構造解析についても,高分解能回折データ取得と結晶構造モデル解析を行い,ネオニコチノイドがニコチン性アセチルコリン受容体に対して相互作用する分子機構について深く迫りたいと考えている.
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Research Products
(3 results)