2018 Fiscal Year Research-status Report
シロアリの食害行動に関与する水代謝システムの解明と制御技術の開発
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16K21597
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
神原 広平 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60727577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シロアリ / アクアポリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はシロアリの食害行動と密接に関与する水代謝システムの分子基盤の解明を目的としている。今年度はイエシロアリの職蟻からクローニングしたDRIP型アクアポリンとPRIP型アクアポリンの2種類の水輸送活性を検討した。 まず、2種類のイエシロアリアクアポリンが同じ細胞で組織特異的に共発現することを確認している唾液腺細胞を対象に検討を進めた。イエシロアリ職蟻から摘出した唾液腺を高張液または低張液に浸漬し、水輸送による唾液腺細胞の膨潤収縮が生じるかを光学顕微鏡を用いて観察したところ、高張液では唾液腺浸漬後、細胞が直ちに収縮し凝集した状態になり、低張液では逆に細胞が膨潤することが確認できた。続いて、2種類のアクアポリンのそれぞれの水輸送活性についてアフリカツメガエル卵母細胞発現実験系を用いて検討するため、遺伝子配列末端にキャップ構造を有するcRNAを合成するためのプライマーを設計し、cRNAの合成を進めた。現在、卵母細胞に微量注入してアクアポリンを発現させて水輸送活性の測定を進めている。 つぎに、RNA干渉効果を用いたアクアポリン遺伝子の発現阻害によるイエシロアリ職蟻個体への影響を検討した。イエシロアリアクアポリンを標的に合成した2本鎖RNAの経口投与ではRNA干渉効果が示されなかったため、体腔への微量注入によるRNA干渉を進めるにあたり、イエシロアリ職蟻に対する注入液量の検討を行った。その結果、胸部背面の節間から平均約4.6 nLの注入液量が適当量であることが示された。また、微量注入試験においては、青色色素を体腔注入した場合に、マルピーギ管(ヒトの腎臓に相当し、消化管からの水の再吸収等に機能する器官)へ色素が取り込まれる現象を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではこれまでイエシロアリ唾液腺細胞において2種類のアクアポリンを介した水の流出入を示唆する結果を得ている。アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いたイエシロアリアクアポリンの水透過性の定量的な機能解析においては、卵母細胞発現系で必要となる標的アクアポリン遺伝子を1種類合成した。現在、当該合成遺伝子の卵母細胞への注入と解析を進めている。また、RNA干渉効果によるイエシロアリアクアポリンの発現阻害が職蟻個体へ及ぼす影響についても検討を進め、2本鎖RNAの合成に加えイエシロアリ個体への微量注入における最適液量を決定した。これらの進捗状況をふまえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて、2種類のイエシロアリアクアポリンの水透過能を詳細に比較解析するとともに、イエシロアリと異なり乾燥下で生存可能なアメリカカンザイシロアリから昨年度獲得したアクアポリンについても解析を進め、シロアリの水代謝システムの総合的理解に繋がる知見を得る。
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Causes of Carryover |
(理由)水透過能解析に用いる遺伝子合成等に時間を要したため、発現解析に使用する試薬及び材料の購入が遅れ次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度使用額については、機能解析のための試薬及び材料購入に使用する。
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