2018 Fiscal Year Research-status Report
老いの姿はなぜさまざまなのか―進化の隣人チンパンジーの多様な加齢プロセスに探る
Project/Area Number |
16KT0006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 寄附研究部門教員 (90642950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (10360215)
中村 美知夫 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30322647)
座馬 耕一郎 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (50450234)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 老齢学 / 老化 / チンパンジー / 人類進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)研究代表者及び分担者が1989年から蓄積してきた野生及び飼育下のチンパンジーの行動記録ビデオテープのファイル化とデータベース化を、前年度に引き続き行なった。これまで再生できなかった動画をファイル化したことにより、他の研究者が行う認知実験に使用する刺激素材の提供が軌道に乗った。チンパンジーが他個体の年齢をどう認識するかなど、幅広い比較認知研究に寄与している。 2)研究代表者中村は、京都大学霊長類研究所、京都市動物園、日本モンキーセンターにおいて飼育下の個体の成長や老化に伴う行動変化の観察とビデオ記録を行い、現在は老齢となっている個体の若齢時の記録ビデオとの比較方法について検討を続けた。分担者保坂は2018年12月にマハレ山塊国立公園(タンザニア)に10日間滞在し、成熟雄を対象とする野外観察を行った。前年度に同観察地で得たデータや、ファイル化した過去の映像データと合わせ「老齢個体の方が遊びを高頻度に行う」との作業仮説の検証を進めた。分担者座馬は2次元/3次元ビデオ動作解析システムを導入し、前年度の野外調査時に観察した個体について、若齢だった過去の行動と現在の行動を特に毛づくろいに着目して比較を試みた。いずれも分析/検討中であるが、論文執筆に見合うデータが得られつつある。分担者中村美知夫は2018年9月と11月12月にマハレ山塊国立公園に滞在し、チンパンジーの人口動態の基礎資料の収集を行うとともに、研究成果公表に向けての調整を担った。 3)上記の野外及び飼育下での調査結果と動画解析の進展を踏まえ、分担者保坂が所属する鎌倉女子大学において研究報告を兼ねたシンポジウム「老いの進化―映像データベースが拓くPan属類人猿研究の新展開―」を主催(鎌倉女子大学生涯学習センター/鎌倉女子大学学術研究所と共催)した。招聘したボノボやヒトの研究者との議論と情報交換が行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
劣化した古いビデオテープの修復と解析に時間を要した。 過去の観察記録ノートのデータ化を依頼する補助事業者の適任者が見つからず、作業が遅れている。 京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリでの観察は、災害等の影響で予定通り実施できなかった。 老化に伴う行動変化の観察対象個体が死亡し、観察対象の変更を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は昨年度が最終年度であったが、上記の理由で予定した作業と研究が進まず、代表者は期間延長を申請した。 行動記録ビデオテープのファイル化は全体の2割程度が残っているが、延長期間中に終了し、分析に加える予定である。 本研究費で購入した動画解析システムや動画編集用コンピュータを活用し、論文執筆に着手するとともに、動画のデータベース化を進め、整理が済んだものから順次公開を始めたい。また、認知実験用の動画刺激を提供した研究者からのフィードバックをふまえ、本研究期間終了後の発展的な継続研究の準備に着手する。
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Causes of Carryover |
(理由)過去の動画記録のファイル化において劣化したビデオテープの修復と解析に時間を要し、当初想定した期間中に予定の作業が終了できなかったため期間延長を申請した。また、自然災害などの影響で実験/観察を実施できなかった飼育施設があり、観察対象を変更した。 (使用計画)ファイル化は今年度前半に終了を目指し、遅れている分析と論文執筆に力を注ぐ。前年度に着手したデータベース化と公開の準備を引き続き進め、今年度中に公開する。
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Research Products
(15 results)