2018 Fiscal Year Research-status Report
多宗教共存とエスニシティ共生―旧英領カリブ社会における民族紛争抑制のメカニズム
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16KT0045
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 輝之 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任准教授 (20546832)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | フィールドワーク / 古文書調査 / 参与観察 / 国際学術雑誌論文 / 国際学会口頭発表 / データ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の主な成果を、本課題の研究方法に即して整理する。 【現地調査】4月、トリニダッド・トバゴ(TT)およびガイアナでの現地調査を実施した。TTでは、西インド諸島大学図書館West Indiana Special Collectionでの古文書データ収集を再開・継続し、ガイアナでは、Francis Alleyneジョージタウン大司教、カトリック教会の神父、イエズス会宣教師等への聞き取り調査、カトリック教会機関紙Catholic Standardおよび国立古文書館(Walter Rodney National Archives)での歴史調査、カーリー寺院にて宗教指導者と信者に対する聞き取り調査とPujaへの参与観察を実施した。 【調査データ分析】聞き取り調査データの書き取り作業と分析、古文書調査によって収集したデータの解析を継続した。 【研究成果の発表】データ分析の結果について、第1に、2018年アメリカ人類学会総会(11月14~18日,於:米国サンノゼ)における口頭発表(タイトル:The Power of Mary: Inspiration and Seduction for Colonial Construction of Religions)を行った。第2に、論文原稿(タイトル:The Power of Mary: La Divina Pastora and the "Coolie Mission" in Colonial Trinidad)を国際学術雑誌 Journal of Ecclesiastical Historyを投稿するとともに、同誌主催による World Christianities Essay Prize にエントリーした(審査結果は2019年9月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、遅れていたガイアナでのフィールドワークを、現地の宗教関係者、大学関係者などの協力を受けて予定よりも効率よく進められたことで、データの収集については加速しているが、一方で、前年度までと同様、古文書調査で得たデータの読み取り、解析作業に時間がかかっている。高い古文書解析能力を持った専門家のサポートが日本国内では得られる見込みがなく、引き続き、関わりのある海外の研究者を通じて専門家を探している。すでに解析が済んでいるデータだけでも数本の論文執筆ができるので、研究成果の発表が遅れないよう、並行してしっかり進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度中に以下の目標を達成する。 【現地調査】8月後半から9月にかけて、トリニダッド(TT)およびガイアナで3週間程度の現地調査を実施予定である。TTでは歴史調査の継続、ガイアナでは、古文書調査とともに、聞き取り調査と参与観察に力を入れて実施してデータの収集に努める。 【研究成果の発表】(1)国際学会 Theology in the Caribbean Today(6月24~28日、於:TT)において発表することになっている(決定事項)(仮タイトル:The Power of the Illegitimate: Spirituality and Sexuality of the Madonna)、(2)現在執筆中の2本の論文原稿(国際学術雑誌 New West Indian GuideとMaterial Religion)および構想中の論文1本を年度末までに投稿する、(3)並行して、年度内に、書籍出版計画書を修正のうえ、2章分のサンプルを添えて投稿する(University of Illinois Pressのシリーズ Folklore Studies in Multicultural Worldを予定)。
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Causes of Carryover |
所属機関でのエフォート管理の関係で、本課題にも関連する教育活動に多くの時間を割かなければならず、予定していた複数回の長期現地調査が実施できなかった。それでもトリニダッド(TT)の場合、これまでの多くの経験と、その中で培ってきたネットワークがあり、聞き取り調査や参与観察の段取りがスムーズに組めたことで限られた現地調査が予定通り進んでいる。一方、ガイアナについては、現地の宗教関係者や研究者に多くの協力を得てはいるものの、調査のスケジューリングに若干の苦労を経験している。しかし、本年度の調査で今後の調査に役立つ人脈を作れたので、2019年度での調査でしっかりと遅れを取り戻し、課題の目的を達成するために必要となるデータを収集できると確信している。加えて、先述したように、古文書資料の読み取りをサポートしてくれる専門家の選定に苦労しているが、なるべく早期に見つけ、データ分析のプロセスを早め、より有意義な研究結果に結びつける。
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Research Products
(2 results)