2019 Fiscal Year Research-status Report
多宗教共存とエスニシティ共生―旧英領カリブ社会における民族紛争抑制のメカニズム
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16KT0045
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
辻 輝之 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (20546832)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2021-03-31
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Keywords | 国際学会発表 / 現地調査 / 古文書調査 / 歴史データ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究実績は、本課題の目的・方法に沿って整理する。 ● 研究成果発表:6月、トリニダッド・トバゴのMount Saint Benedict修道院で開催された学会Theology in the Caribbean Todayの25周年記念大会において招待発表を行った。題目はThe Power of the Illegitimate: Dress, Sexuality, and Spirituality of the Madonna。発表は、トリニダッド・トバゴで2大宗教集団であるカトリック教徒とヒンドゥー教徒による同一マリア像 La Divina Pastora の分有信仰におけるジェンダーとセクシュアリティの影響についてマリア像の衣服に注目して論じた。異宗教間の関係に着目して、エスニック集団間の緊張と紛争抑制について調査研究することを目的とする本課題の中で最も重要な事例である。発表時に得た問いや意見を踏まえ、査読学術誌Journal of Ecclesiastical Ordinance に寄稿したが、出版には至らなかった。現在、査読の結果を踏まえ、別の学術誌 Material Religionに寄稿すべく改稿を行っている。また、同じ事例を異なる観点から論じた原稿 The Two Madonnas: La Divina Pastora and "Coolie Mission" in Colonial Trinidad を完成した(4月第1週に投稿済み)。 ● 現地調査:8~9月、トリニダッド・トバゴでの現地調査を実施し、西インド諸島大学図書館West Indiana Special Collectionおよび国立古文書館での歴史データ収集を再開・継続した。 ● 調査データ分析:聞き取り調査データの書き取り作業と分析、古文書調査によって収集したデータの解析を継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
8~9月に行った現地調査は、出発時、トリニダッド・トバゴだけではなく、ガイアナでの調査も予定していた。しかし、調査先として最も重要なジョージタウン大司教区からの調査許可について返答がなかったので、ガイアナでの調査を中止し、トリニダッド・トバゴでの調査に集中した。2020年3月にガイアナでの調査を再開すべく準備を進めていたが、同月に実施された総選挙に伴って、民族集団間の緊張と政情不安が高まっていたこと、追い打ちとしてコロナ禍が発生し、再び中止せざるを得なくなった。トリニダッド・トバゴでの調査は順調に進んでいるが、比較対象としているガイアナでのデータ収集が予定より遅れていることが課題の進捗状況全体に影響を及ぼしている。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールドワークの再開が何よりも重要である。しかし、コロナ禍の影響で、フィールドワークを通常通り再開できるか不透明である。可能であれば、8~9月に3週間程度、2~3月に2週間程度の調査を実施予定であり、それに向けて、調査先とのコミュニケーションを継続して行っている。また、これまでに収集したデータの分析作業に研究費を有効に活用して、査読学術誌に投稿する論文の執筆を進める。
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Causes of Carryover |
2019年度に予定していた現地調査、特にガイアナでの調査が実施できなかったことが主因となり、旅費としての支出が大幅に少なかったことによる。8~9月にはトリニダッド・トバゴでの調査は実施できたものの、併せて実施する予定であったガイアナでの調査は、調査先として最も重要なジョージタウン大司教区からの調査許可について返答がなかったのことにより中止した。また、2020年3月に予定していたフィールドワークも総選挙に伴う政情不安と民族集団間の緊張の高まり、加えて、コロナ禍の発生により、中止せざるを得なかった。今年度は、コロナ禍の推移を見ながら、現地調査を行わなくても成果が出せるよう、研究費の有効活用を図っていく。
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Research Products
(1 results)