2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安部 健太郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (70462653)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 神経科学 / シグナル伝達 / 脳・神経 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経細胞における活動依存的な遺伝子発現制御をモデルに、それに関わる多数の転写因子の活性を定量的かつ経時的に計測、およびそれらの活性を操作することを通じ、細胞における遺伝子発現制御機構を構成的に明らかにすることを目的とする。その目的のため、細胞において多数の内在転写因子の活性を定量的かつ高精度に測定する手法を開発し、それを用いて、培養神経細胞または生体における神経活動依存的な多数の転写因子の活性を明らかにし、それらを基に個々の遺伝子の発現制御の数理モデルを作成する。 本年度は、転写因子活性を可視化することが可能な転写因子活性レポーターウイルス(Abe et al., PNAS, 2015)を改変し、50種類以上の転写因子に関するレポーターウイルスを作成、それらの高力価溶液を精製した。これらのウイルスをマウス海馬神経細胞および大脳皮質神経細胞の初代培養系に感染させ、それぞれの転写因子について神経活動依存的な活性変化を複数のタイムポイントにおいて定量計測した。使用する検出系を見直し、同一細胞または同一サンプルにおいて最大8種類の転写因子の活性を同時定量計測することを可能にする改良を施した。これらの解析の結果、神経活動依存的な活性を示す転写因子を多数同定することに成功し、また、転写因子により活性変化のタイムコースが異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では高い精製度をもつ高力価ウイルスを効率的に多量作成することが不可欠であり、ウイルス作成プロトコールの整備は本研究の今後の研究の進捗に貢献する。本年度においては、50種以上の転写因子の活性を可視化することを可能にするレンチウイルスベクターを順次作成した。またウイルスの精製に関し、プロトコールの至適化を行い、効率的かつより安価に高力価ウイルスを作成する独自プロトコールを確立した。 次に、作成したウイルスベクターを用い、マウス海馬神経細胞の初代培養系を用いて、培養神経細胞における50種類以上の内在転写因子の活性の定量計測を行った。高カリウムバッファーによる神経活動誘発処理2時間後、6時間後と無刺激群との内在転写因子活性の違いを解析し、レポーター遺伝子の定量PCR法により転写因子活性を定量計測した。その結果、神経活動誘発処理群において、既知の神経活動依存的な転写因子CREB, EGR1, MEF2, SRFなどの転写因子の活性上昇が認められた。また、上記の転写因子の他にも、10種の転写因子に関して有意な活性上昇がみられ、12種の転写因子に関しては活性の低下が観察された。また、それぞれの転写因子について活性のタイムコースは異なり、特に、早い活性変化や遅い活性変化を示す転写因子については、より詳細な活性変化のタイムコースを解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、計画通りに進捗している。次年度は、前年からの解析を続行するとともに、神経活動誘発刺激の種類や条件による転写因子活性化の違いを明らかにする。また、細胞内シグナル伝達系を構成する因子や神経調節因子が神経活動依存的な転写因子活性に及ぼす影響を明らかにするため、転写因子活性を制御する主要な細胞内シグナル伝達分子に対する阻害剤や活性化剤処理・機能改変分子の発現を用い、神経活動依存的な転写因子活性変化を取得し、シグナル因子の活性操作が各転写因子におよぼす影響を明らかにする。また、培養神経細胞系において、転写因子活性化のアウトプットであるトランスクリプトーム変化の情報を複数のタイムポイントにおいて明らかにする解析を進める。これに加え、遺伝子発現制御システムを構成するコンポーネントの人為的活性制御においてもコンポーネント活性制御後の遺伝子発現アウトプット情報としてのトランスクリプトーム変化の情報を取得し、各転写因子の活性が変化した際のアウトプットの変化を明らかにする。これらのデータ取得後に、以上の解析結果を統合し、個々の遺伝子の発現制御の数理モデルを作成し、これを基に任意の発現タイムコースを示す人工プロモーターを合成する。
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Causes of Carryover |
本年度途中に平成29年4月に所属機関を変更することが決まったため、本年度中に購入予定であった機器や試薬類の購入を遅らせ、次年度において新所属機関において購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年4月に購入予定であった機器や試薬類の購入を行う。
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