2018 Fiscal Year Research-status Report
過去の不正義・先住民族・戦争・移民の民事法理論--補償・市民(公民)権の意義
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16KT0082
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 乾 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (00281775)
辻 康夫 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (20197685)
丸山 博 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 名誉教授 (70281871)
ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80646406)
井上 勝生 北海道大学, 文学研究科, 名誉教授 (90044726)
上村 英明 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (90350511)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 先住民族 / 補償 / 過去の不正義 / 国際人権法 / 市民権 / 移民問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
補償問題(とくに先住民族に関するそれ)については、代表者吉田が、2018年夏から滞在しているコロラド大学ロースクールが、その研究のハブ的な存在であることもあり、かなりの進捗を見た。順に述べると、第1に、アイヌ新法制定の議論が急浮上して、それへの批判的対応のために、複数回の研究会を開催して(同年12月、2019年1月)、その成果としての意見書を内閣官房に提出した。第2に、2019年3月に、コロラド大学ロースクールで、UNDRIP(国連先住民族権利宣言)の推進の国際会議があり、吉田の報告及びアイヌ関係者招聘によるアイヌ民族の特別セッションを企画し、国際的発信という意味で、重要な成果を収めた。更に、東大でのフィリピン・ママヌワ族を迎えての国際会議での報告(同年2月)での東アジア、東南アジアでの国際人権法実現制度の不在を訴えたことも重要である。第3に、関連研究者との交流も充実しており、①スウェーデンのウメオ大学サーミ民族研究所での講義を行い(2018年3月)(これは、2019年4月の北大での国際研究会に繋がっている)、②アラスカ大学でのアラスカ原住民研究会議参加(2018年4月)、③ニューメキシコ大学ロースクールでの意見交換(2019年1月)、④ブリティッシュコロンビア大学での意見交換(同年1月ないし3月)でカナダ先住民理解が深まり、更に、世界的規模での先住民族調査として、⑤ベリーズ訪問によるマヤ民族調査(同年2月)、⑥ケニア訪問によるマサイ民族、エンドロイ民族調査を行った(同年3月)。これらは国際人権法関連の紛争舞台でもある。
戦争関連の補償問題に関しては、上海師範大学での講義(2018年8月)、それを受けた海南島での中国人慰安婦調査を行い(同年11月)、その成果を公表した。
他方で、移民問題は、わが国の入管法改正もあり、内外共に議論が百出し、まだそのまとめには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に述べたように、先住民族研究は飛躍的に進捗して、その成果も収めたし、戦争問題の補償問題も、東アジアでの重要な展開に対応しての発信も行った。他方で、移民研究の課題は残されており、それらを総合する研究は次年度に回された。
アイヌ民族に関する新法の動きとの関係では、それなりに状況をよくするために、最善を尽くしたが、手応えは今ひとつであった。しかし研究者として、論文で発信し、また国際的な研究者連携を積み重ねるしかないと思われる。
総じて、当初の計画通りに進捗しており(先住民族分野においては、当初の計画以上の成果まで生じている)、「順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
先住民族の補償問題については、国内外の国際会議が先行する形で進捗し、また意見交換・国際的連携のネットワーク作りは非常に充実してきたので、あとはその成果を公表を予定するが、もう順々にその目処は立てている。他方で、アイヌ新法の動きは、本研究の道筋と未だかけ離れているという大きな課題があり、これへの善処策としては、例えば、国連の関係者との緊密化、その協同活動の強化という展望を作りつつあるが、これもまた次年度の課題である。
その他、戦争補償の問題については、鋭意これまでの成果を更に進捗させたいが、移民問題との総合的考察は、次年度の課題として取り組みたい。
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Causes of Carryover |
不慮の悪天候により一部出張行程を変更せざるを得なくなり、結果として旅費に残額が生じてしまった。研究計画それ自体は順調に進行しており、残額は次年度の出張費として使用することを考えている。
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Research Products
(13 results)