2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化の理念的・規範的評価によるグローバル・イシューの解決策
Project/Area Number |
16KT0095
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 宏 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (70288504)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 耕治 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20165286)
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
舒 旻 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (20534986)
BACON Paul.M. 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (40350706)
眞田 康弘 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 客員次席研究員(研究院客員講師) (70572684)
中村 英俊 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (80316166)
土屋 大洋 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (90319012)
|
Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
|
Keywords | グローバル・イシュー / グローバル・ガバナンス / 将来予見型ガバナンス / anticipatory governance / backcasting / forecasting / foresight |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究目的は、本研究で扱うグローバル・イシューの現状把握とそれらの解決のためのアプローチを探るものであった。従来の方法論である現状把握から将来を予想する方法(フォーキャースティング:forecasting)や望ましい将来像を設定して現在の政策を選択していく方法(バックキャースティング:backcasting)を検討した。しかし、前者の方法ではこれまでに多くの問題点が指摘されている。例えば、冷戦の終焉について国際政治理論の主流であるリアリズムもリベラリズムも全く予想できなかった。予想できなかった直近の例としては、英国のEU脱退の国民投票の結果や米国のトランプ大統領の誕生も予測できないできごとであった。後者の方法に関しては、気候変動問題は バックキャースティングの方法との親和性は高いが、他の諸問題に関しては、さらなる検討が必要であることを確認した。こうした各々のアプローチを検討していくなかで、将来予見型ガバナンス(anticipatory governance)という概念が、本研究で扱う諸問題の解決策模索のためのアプローチに共通して採用できるのではないか、ということになった。将来予見型ガバナンスとは、将来予想される状況を複数予見(foresight)して、それらの予め想定された状況に柔軟に対応できるようにし(network governance)、採用された政策に対する反応をよりよいガバナンスに取り入れる(feedback for applied learning)ようにすることである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の採択決定の時期が想定以上に遅く、研究分担者の中には初年度の研究計画を当初の予定どおり実施できない者もいたので、研究の進捗状況がやや遅れている研究分野も存在する。その中でも、本研究で扱うグローバル・イシューの現状把握が進捗しているものとして、英国のEU離脱後のEU統合に関する研究、EU安全保障・防衛協力のガバナンス研究、EUの連帯とリスクガバナンスなどに関しては、研究が進んでいる。EUと人間の安全保障やEUと日本の協力関係に関する研究の進捗状況も良い。また、人間の安全保障と災害、特に、福島第一原発事故の人間の安全保障の観点からの分析も行われている。さらに、気候変動問題の現状理解と日本の外交との関連での研究も進行中で、気候変動緩和策と関連の深いエネルギー政策に関する研究成果も上がっている。サイバーセクリティーについての現状把握は多岐にわたっていて、今後さらなる研究の積み重ねが大いに期待できる。海外の研究協力者とも互いの研究協力の方向性について、また、研究対象として関心のあるリサーチ・クエッションについても意見交換を行った。 これらの諸問題の現状把握研究と並行して、共同研究の統合をはかるための理論的な枠組みの検討として、将来予見型ガバナンス(anticipatory governance)という概念が、本研究で扱う諸問題の解決策模索のためのアプローチに適応できるのではないか、ということになった。この概念は、新しい科学や技術の応用が社会に与える影響を予め評価しておくこと、あるいは、将来の大災害や政治経済上の大変化を弱いシグナルから予見して予め多くのシナリオを想定して将来の変化に備えることである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究の主目的は、本研究で扱う各々のグローバル・イシューの解決策模索のために、どこまで将来予見型のガバナンス(anticipatory governance)の枠組みを適応できるかを、各共同研究者の研究テーマにそくして検討することである。その際、現在追加申請をしている研究分担者のこれまでの研究成果を参考にすることにする。同研究分担者候補は、気候変動緩和策としての大規模な地球工学の導入に関する社会的影響などを、将来予見型ガバナンスの観点から評価するという研究を推し進めていて、本研究グループへの参加を通して、より明確な形で他の研究分担者の研究テーマにanticipatory governanceの概念を適応できるのか、検討を進める上で重要な役割を担う。今後の研究推進のより具体的なロードマップとしては、今年の9月あるいは10月を目途に、研究分担者が扱う各テーマに関するanticipatory governanceの分析枠組みを適応した論文あるいはその概要を執筆することにしている。それを受け、次年度に関連する主な学会での報告や国際ワークショップ開催に向けて、より具体的な内容を決めて、さらに研究の推進を図っていく計画である。
|
Causes of Carryover |
本研究の採択の決定ならびに予算の執行が、当初想定した時期よりかなり遅く、分担研究者の多くに研究計画を見直す必要が生じ、初年度に計画していた海外での調査研究などが実施できなかったのが、最も根本的な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、初年度に計画していた海外での調査研究を行うとともに、本年度において当初から計画している調査研究を実施する。また、研究の進捗をすすめるために研究合宿をなどを実施して、研究分担者間の研究交流を図るとともに、最終年度に計画されている成果報告について検討する。さらに、新たに研究分担者を追加することによって、今年度で固まりつつある将来予見的ガバナンス(anticipatory governance)の理論的枠組みを研究分担者間で共有するとともに、各事例研究への応用について研究を深める。
|
Research Products
(9 results)