2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化の理念的・規範的評価によるグローバル・イシューの解決策
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16KT0095
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 宏 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (70288504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 耕治 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20165286)
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
舒 旻 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (20534986)
BACON Paul.M. 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (40350706)
眞田 康弘 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 客員次席研究員(研究院客員講師) (70572684)
中村 英俊 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (80316166)
土屋 大洋 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (90319012)
石井 敦 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (30391064)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | グローバル・イシュー / グローバル・ガバナンス / 将来予見型ガバナンス / anticipatory governance / foresight / engagement / integration |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度の研究目的は、将来予見型ガバナンス(anticipatory governance: AG)概念が各研究分担者の研究対象としているグローバルあるいはリージョナルな課題にどの程度適用できるか、ということを検討した。将来予見型ガバナンス(AG)とは、将来予想される状況を複数予見して、それらの予め想定された状況に柔軟に対応できるようにする、あるいは想定される危機の軽減をはかることであるが、各研究分担者が研究対象とする課題について、AGの主要な観点である予見、参加、統合の視点からの分析可能性を検討した。AG概念の元来の目的は、大規模に社会に影響を与えうる新しい科学技術を導入する際に、その導入に関して広く社会に働きかけて批判的な検討を加えるというものである。したがって、この概念を政治経済や社会問題などの科学技術以外の課題に適応するために、それ相応の概念操作を要する。したがって、29年度の研究ではAG概念の応用可能性を主に検討した。 具体的には、例えば、世界の難民問題に関して難民高等弁務官事務所における聞き取り調査を通じて、AGの視点の必要性が確認された。また、AG研究を通して、民主主義体制の維持、人権問題、安全保障問題、気候変動問題などのグローバル・イシュー解決に向けての日欧の協力の必要性が再認識された。サイバーセキュリティ関連の研究や地域の経済秩序に関する研究、気候変動問題の解決策としての地球工学的手法の導入の是非に関するAG概念からの分析、さらには漁業資源管理における科学と政策のギャップに関する分析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界の難民問題に関して難民高等弁務官事務所における聞き取り調査を通じて、本国際機関が事後処理的な対応に追われていて、中長期的な視点あるいは危機的状況の軽減の視点からのガバナンスが行われておらず、本研究の中心的概念として検討しているAGの視点の必要性が確認された。また、開かれた自由主義の危機という問題認識に基づいて開催されたEU-Japanフォーラムへの参加を通して、開かれた自由な国際秩序の維持、人権問題、安全保障問題、気候変動問題に関する日欧のグローバル・イシュー解決に向けての協力が国際秩序の安定に不可欠であることが再認識されるとともに、これらのグローバルな問題に共通する問題の複雑性、不確実性、多様な価値観や規範の相克、多様かつ多層のアクターの相互作用によって構築される過去・現在・将来の国際関係の分析に関して、AGアプローチの有効性がある程度確認できた。また、サイバーセキュリティ関連の研究や地域の経済秩序に関する研究は大いに進む一方、気候変動問題の解決策としての地球工学的手法の導入の是非に関するAG概念からの分析、さらには漁業資源管理における科学と政策のギャップに関する分析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は研究成果のまとめを行うことになるが、まず、様々なグローバル・イシューの分析を可能にするために、早期に理論的枠組みをより明確にするとともに、国際関係学会(International Studies Association)等での研究発表の申請を行う。現段階の提案としては、AGの観点から分析するエネルギー転換の政治(日独比較)、アジア地域での新たな秩序形成に関する分析、AGとサイバースペースのテーマでのパネル設置を申請する予定である。次に、各研究分担者の事例研究を深めるために、対面での研究会やスカイプ等を利用した会議を通して、全体あるいは個別に研究の進捗状況を把握する。そして最後に、海外の研究機関の研究協力者(ユトレヒト大学のBiermann教授やUBCのTiberghien教授等)と研究分担者とともに国際ワークショップを日本で開催するか、海外の国際関係学会などで報告する機会を得て、本研究の成果を報告する。これらの共同研究活動を通して報告書の出版あるいは研究発表の予稿集などを発刊することを計画している。
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Causes of Carryover |
年度内に予定していたUBC(バンクーバー)の研究協力者との研究打ち合わせのための海外出張が、当人が日本の大学での招聘講師として来日したことによって、必要ではなくなったため。また、翌年度に数名の海外研究協力者を招聘して国際ワークショップの開催を計画しているが、そのために可能な限り余分に助成金を残しておきたかったため。さらに、国際ワークショップの開催費用が間に合った上に基金に多少の余裕が生じた場合は、研究成果の印刷代に回す予定である。
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Research Products
(10 results)